研究課題/領域番号 |
23500969
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
中村 強 福岡女子大学, 国際文理学部, 教授 (30581912)
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キーワード | 非アルコール性脂肪肝炎 / 生体抗酸化 / ビタミンE / 抗炎症作用 |
研究概要 |
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の病態モデル(STAMマウス)を用い、抗酸化物質投与の発症予防及び治療効果に関する研究を継続して実施している。昨年度はSTAMマウスに食品中の代表的な抗酸化物質であるビタミンE(VitE)を投与し、 NASH発症予防に対する効果を検討した。 脂肪肝を発症した5週齢STAMマウスに、100gあたり通常の高脂肪食(VitE 21mg/100g)またはVitEを強化した高脂肪食(VitE 50 mgまたは100 mg/100g)を投与し、コントロール群、VitE 50群、VitE 100群とした。脂肪肝からNASHを発症する期間(5~8週齢)まで飼育を行い、飼育終了時に脱血屠殺して、血清及び肝臓を採取し、血清生化学検査(AST、ALT)、肝臓の組織学的検査(HE染色)及び肝臓中の炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6)のmRNA発現量の測定を行った。 血清生化学検査の結果、VitE 50及びVitE 100群のAST、ALT値はコントロール群に比べて有意な低値を示した。肝臓の組織学的検査の結果、コントロール群は肝脂肪化に加え、小葉内炎症や肝細胞の風船様腫大などのNASHの病理所見が確認された。一方、VitE群では、VitE 100群にて肝脂肪化及び小葉内炎症の改善傾向がみられた。さらに、炎症性サイトカインのmRNA発現量を測定した結果、VitE 100群のIL-1β、IL-6のmRNA発現量はコントロール群に比べて低値を示す傾向にあった。 これまでの結果から、STAMマウスにおいて、脂肪肝からNASHに至る期間にVit Eを強化した飼料を与えることで肝臓内の炎症が抑制され、肝障害の程度が軽減されることが示唆された。すなわち、VitEの投与はNASHの発症予防に有効であることが期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度目標は、抗酸化食品の日常的な摂取を想定し、病態マウスを用いたNASH 等の発症予防における効果を検証である。また、本病態マウスは新規なモデルであるため、飼育法などで試行錯誤しながら進めたためもあり、その点、やや進捗が遅れている面もある。 実験では、主に食品中に豊富に含まれるビタミンEのNASH予防効果を検証した。結果の概要は研究実績に示したとおりであり、抗酸化物質であるビタミンEの投与が有効であるとの結果を得た。また、その効果は組織学的検査や炎症誘発性のサイトカインのmRNA発現量を抑制することも見出した。 また病態モデルの安定的な作製法もほぼ確立したことから、次年度に向け、本モデルを用い、その他の抗酸化物質、例えばポリフェノール等も加えた併用投与による効果も検証し、明確な予防効果が検証できるかの探索にも繋げたい。 加えて、抗酸化物資物質であるビタミンEやビタミンC、ポリフェノール、プロアントシアニジン、微量金属を多量に含む経腸栄養剤が市販されている。これまで、LPS発症の敗血症モデルの延命効果や肝虚血再灌流モデルでの抗炎症効果も認めていることから、NASHの発症予防や発症抑制の可能性が期待される。本年度は、これも検討に加える予定である。
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今後の研究の推進方策 |
抗酸化物資物質であるビタミンE、やビタミンC、ポリフェノール、プロアントシアニジン、微量金属を多量に含む経腸栄養剤が市販されている。本年溶剤もNASHの発症予防や発症抑制に効果が期待されることから、これも検討に加える予定である。 本栄養剤はこれまでの研究で、LPS投与に伴った重篤な敗血症による炎症、及び敗血症に伴った致死率を著明に改善する効果を認めている。また、昨年度の研究にて、肝虚血・再灌流障害モデルにて、肝臓炎症の改善効果及び炎症性のmRNA発現を抑制することを認めている。 先に、示したとおり、この効果がNASH発症や治癒に有効である可能性が示唆されることから、この面での検討も実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は顕微鏡(200千円)以外は、病態モデルの作製費用(500千円)や分析費用(400千円)、及び出張旅費(62千円)に使用予定である。また、最終年度であるため、論文作成費用(200千円)にも本研究費を使用したい。
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