本科研費研究は生活習慣病の表現型である非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に着目して実施した。NASHとは常習飲酒歴とは無関係に肝組織にて壊死・炎症を伴い、脂肪肝を呈する疾患である。現在のところ、本疾患は肥満人口の増加や生活習慣の欧米化に伴って、更なる増加が想定されている。また、肝硬変や肝ガンへの進展と、生命予後にも大きく影響することから、近年では軽視できない重要な肝疾患の一つとされている。 しかしながら、発症機序や予防法、治療法が未だ明確にされておらず、また薬物療法では耐糖能改善薬や肝機能改善薬などの使用が試みられているが的確な効果が見出されていないのが現状である。 本疾患は酸化ストレスが発症に関与することから、適切な病態動物の開発、及び抗酸化物質投与の影響など、NASHに関する基礎的検討(中村強:科学研究費基盤(C):2011~2013年度)を実施した。 ヒト発症要因に極めて近似させて作製される病態モデル(STAMマウス)を用い検討した。その結果、①血清生化学検査値(特に肝機能)や肝組織学検査にて評価したところ、ヒト疾患に極めて近いこと、ならびに比較的短期間で発症することを見出した。②抗酸化物質であるビタミンEならびに耐糖能改善効果のあるイソロイシンやロイシン投与の効果を検証したところ、STAMマウスの肝障害はいずれの成分の投与でも有意に抑制されることを見出した。
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