研究課題/領域番号 |
23500972
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
清瀬 千佳子 神奈川工科大学, 応用バイオ科学部, 教授 (50272745)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ビタミンE / CEHC / 抗炎症作用 / 脂肪細胞 / 共培養 |
研究概要 |
本研究は、ビタミンEの代謝物であるカルボキシエチルヒドロキシクロマン(CEHC)体が新たな生理活性を持つことを立証することを目的として、特に、ビタミンEが脂肪組織へと多く蓄積することから、脂肪組織中の抗炎症効果があることを期待し、検討を進めていくことにした。 平成23年度はマクロファージ浸潤脂肪細胞系の確立とCEHCの効果を検討する事を計画し、その計画に沿って実験を実施した。細胞はマウス3T3-L1繊維芽細胞を用いることにし、インスリン等を用いて、成熟脂肪細胞へと分化誘導する系を立ち上げ、安定に成熟脂肪細胞を得られることができるようになった。次に共培養を行うための細胞であるが、マウスの腹腔より腹水を採取し、この中に存在する単球を用いることにした。3T3-L1繊維芽細胞を成熟脂肪細胞へと分化誘導した後に、マウス腹腔単球細胞を添加し、共培養を行った。その結果、炎症性サイトカインのmRNAの発現をその評価項目とし、TNF-α及びIL-6のmRNAの発現を見たところ、TNF-αで約35倍、ILd-6で約15倍の強い発現が確認できた。以上の結果より、マウス3T3-L1脂肪細胞にマウス腹腔内細胞を共培養することで炎症誘導脂肪細胞系の確立ができた。しかし、マウス腹腔細胞中では、単球よりもマクロファージが多く存在していることが明らかとなり、そのマクロファージが炎症性サイトカインを産生している可能性が考えられたので、現在、腹腔細胞からカートリッジカラムにてマクロファージを除去する方法を検討しており、この細胞を用いて、再度、共培養を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度の研究実施計画では、まずは3T3-L1前駆細胞から成熟脂肪細胞へと分化誘導させること、さらにマウス腹腔から腹水を採取し、この成熟脂肪細と共培養する系を確立することが大きな目的だったので、おおむね順調に進展していると判断した。しかし、マウスの腹水には単球細胞だけでなく、マクロファージ化した細胞が存在し、またかなり多くあることが明らかになり、そのマクロファージを除去した単球のみの腹腔細胞にした後に、成熟脂肪細胞と共培養すべきであると思われたので、そのあたりは平成24年度に引き続いて検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度はマウス腹水からマクロファージをカートリッジカラムにて除去し、単球のみを成熟脂肪細胞と共培養することを試みたい。それと同時に、炎症性サイトカインを産生しない、セルライン化したマウスマクロファージ細胞を用いての共培養系も検討する予定である。 この共培養系を用いて、α-トコフェロール、γ-トコフェロール、α-CEHC、γ-CEHCそれぞれの抗炎症作用について実験を行う予定である。また一方で、脂肪細胞ならびに脂肪組織中に存在するCEHCを定量できる方法を確立したい。すでに、脂肪組織以外の肝臓、腎臓、脳のCEHCを定量する方法を既存の方法を改良して定量できるようになっているので、さらに抽出効率を上げるような工夫を行うことで定量できるようにしたい。 平成23年度の費目別収支状況で直接経費で若干未使用額が生じたのは、初年度で行うべき研究が実支出額で行うことができたため、未使用額は次の段階に必要な物品を購入する費用に充てたいと考えた。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は本年度の研究遂行状況から、マウス腹水を精製するカートリッジカラムの購入と炎症性サイトカインを発現しないマクロファージ細胞の購入が必要となる。さらに、本年度に引き続き、マウス3T3-L1細胞の購入、炎症性サイトカイン類のmRNA発現はリアルタイムPCR法で行っていることから、遺伝子発現系を検討するのに必要な試薬や器具類が必要となるので、それらを購入する予定である。従って、次年度の直接研究費はすべて物品費となり、当初の研究計画通りで変更はない。また、昨年度の未使用額は、マウス腹水を精製するカートリッジカラムの購入やマウスマクロファージ細胞の購入費用として、平成24年度の費用と合算して使用したいと考えている。
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