研究課題/領域番号 |
23500974
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研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
安藤 富士子 愛知淑徳大学, 健康医療科学部, 教授 (90333393)
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研究分担者 |
下方 浩史 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 予防開発部, 部長 (10226269)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 知能 / カロテノイド / 喫煙 / 縦断研究 |
研究概要 |
カロテノイドは食品に含まれる代表的な抗酸化物質であるが、その生体内作用は酸化ストレスが強い状態でより顕著になると考えられる。本研究は地域在住者から無作為に抽出された中高年者の知能の加齢変化に対する喫煙とカロテノイド摂取との交互作用を縦断的に検討し、知能に対する喫煙の影響を緩和しうるカロテノイドの種類と量を明らかにすることを目的としている。1.研究成果の具体的内容 平成23年度は知能の加齢変化の様相や知能と喫煙との関係の縦断解析を行った。対象は「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の第3次調査に参加した男女2,361人(平均年齢59.9±11.8歳)で、第3次調査時の喫煙状況(未喫煙、禁煙、喫煙)と第3次調査および2年ごとの追跡調査(第4、5、6次調査)でのウェクスラー成人知能検査簡易版(下位尺度;知識、類似、絵画完成、符号)と数唱検査の結果を用いて喫煙状況、経過年数それぞれの主効果と交互作用について交絡要因を調整して縦断的に検討した。 6年間の経過中、知識、類似、絵画完成得点は有意に上昇し、符号、数唱得点は有意に低下した。数唱以外の4尺度で喫煙状況の主効果が有意で喫煙群は禁煙群・未喫煙群よりも得点が低かったがこの効果は高齢群では減弱した。知識得点では喫煙状況と経過年数との間に交互作用が認められ、未喫煙群と比べ禁煙群は得点の経年的上昇の割合が小さかった。数唱では喫煙の有意な影響は認められなかった。2.意義と重要性 本年度の結果から喫煙が知能の多側面に悪影響を与えておりその効果は若年群ほど強いこと、禁煙によりその悪影響は緩和されるが新たな知識を獲得する能力は未喫煙者と比較して禁煙者では低下していることが明らかとなった。研究仮説の第一段階として知能の加齢変化に喫煙状況が与える影響が明確となったことは今後の研究遂行に非常に重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究計画として、地域在住中高年者の知能の多側面の加齢変化の様相と、それに対する喫煙の影響を関係する交絡要因を調整して縦断的に検討することを目標としたが、そのすべてを達成した。 また、知能の各側面間での喫煙の影響の差異や年齢群による喫煙の影響の差異を明らかにすることができた。これは今後、知能の加齢変化に対するカロテノイドと喫煙との交互作用を解析する上で、着目すべき知能の側面・年代を示唆する有用な知見と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度には、知能の加齢変化とカロテノイドの摂取量・血中濃度との関係について縦断的に検討し、知能の加齢変化に影響を与えるカロテノイドの種類と量とを明らかにする。 最終年度には、初年度、次年度の結果を統合し、知能の加齢変化に喫煙が及ぼす影響をカロテノイドが軽減するかを検討し、軽減した場合にはその効果を定量的に示すことによって、喫煙の知能低下リスク緩和の一方策としてカロテノイド摂取の有用性について総括し、成果を発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度は、東日本大震災に伴う政府の財源確保の一方策として研究費交付額の減額変更の可能性があるとされていたため、高額な物品の購入を控えたことから、次年度以降への研究費の繰越が生じている。 平成24年度以降にはこの繰越分を含め、主として物品費(調査用紙、調査用紙印刷に伴うトナー代等)、人件費・謝金(面接調査、栄養調査等でのデータ収集・整理のための雇用)、旅費(研究成果の発表や資料収集のための学会参加)、そのほか(研究成果発信のための学会参加費、投稿料、別刷代等)を使用する予定である。
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