研究課題/領域番号 |
23500974
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研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
安藤 富士子 愛知淑徳大学, 健康医療科学部, 教授 (90333393)
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研究分担者 |
下方 浩史 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 予防開発部, 部長 (10226269)
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キーワード | 知能 / カロテノイド / 喫煙 / 縦断研究 |
研究概要 |
カロテノイドの抗酸化作用は生体内酸化ストレスが強い状態でより顕著になると考えられる。本研究は中高年者の知能の加齢変化に対する喫煙とカロテノイド摂取との交互作用を縦断的に検討し、「加齢による知能低下を喫煙は加速し、カロテノイドは減弱する」、「加齢による知能低下をカロテノイドが抑制する作用は喫煙者でより強い」という仮説を検証することを目的としている。 初年度には知能の加齢変化に対する喫煙の負の効果を明らかにした。本年度はカロテノイド摂取量が知能の加齢変化に及ぼす影響について縦断に解析した。地域在住中高年者(40-81歳)からの無作為抽出者2,104人(平均年齢59.7±11.2歳)を対象とし、3日間食事秤量記録調査およびサプリメント摂取頻度調査から野菜、果物、およびカロテノイド(α、βカロテン、クリプトキサンチン、βカロテン当量)の一日平均摂取量を推定した。摂取量には季節による周期的変動があり、摂取エネルギー当たりでは高齢群、女性で多い傾向があった。 野菜、果物、カロテノイドそれぞれの摂取量とその後8年間の知能の加齢変化との関係について交絡要因を調整した混合効果モデルで検討した結果、ウェクスラー成人知能検査の中で一般的知識量を示す「知識得点」に関しては、野菜とβカロテンは男女ともに、果物とαカロテンは男性において、摂取量が多い群ほど得点の初期値が高く、その差は8年後まで有意であった。抽象的思考能力を示す「類似得点」では男性のβカロテンとクリプトキサンチンで摂取量が多いほど得点の初期値は高かったが、その効果は年数の経過と共に減弱した。 カロテノイドやカロテノイドが豊富な食品の摂取は中高年者の知能保持に多面的に効果を示す可能性があると考えられた。この効果は従来の報告からもカロテノイドの抗酸化作用による可能性が高く、知能の加齢変化に対して継続的な抑制効果が認められた意義は大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究目的は「カロテノイドが知能の加齢変化に及ぼす影響の縦断解析」であり、この中で①食事およびサプリメントから摂取されたカロテノイド(αカロテン、βカロテン、クリプトキサンチン)量の推定と摂取量に影響を及ぼす因子の同定、②知能の各側面の加齢変化にカロテノイドが及ぼす影響を定量的に示すことであった。これらの研究計画はすべて順調に達成されたが、年度後半に体調を崩したために、学会や論文での成果発表を十分に行うことができなかった。 一方、研究の根幹である統計解析そのものについては、すでに平成25年度の研究目標である「喫煙と知能の加齢変化との関係にカロテノイドが及ぼす影響の縦断解析」を開始し、一部の成果公表のためにすでに2つの学会にエントリーしている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの2年間の研究で、研究開始前に予測した、知能の加齢変化に対する「喫煙の負の効果」、「カロテノイドの正の効果」を明らかにすることができた。最終年度である平成25年度には、当初の計画通り「喫煙と知能の加齢変化との関係にカロテノイドが及ぼす影響の縦断解析」を行う。この中で1)知能の各側面の加齢変化に喫煙・カロテノイドの交互作用が及ぼす影響を解析することによって知能の加齢変化に対する喫煙の影響をカロテノイド摂取が軽減(あるいは増悪)させるかどうかを明らかにし、2)喫煙による知能低下リスクをカロテノイドが軽減した場合には、喫煙の影響を打ち消すのに必要なカロテノイド摂取量を喫煙量依存性に統計的に推定し、3)喫煙の知能低下リスク緩和の一方策として、カロテノイド摂取の有用性について総括する。 すでに国際老年学会(ソウル、2013年6月)等2つの学会での成果発表が確定しているが、最終年度であり、3年間の研究成果を原著としてまとめ、成果を発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度後半には体調を崩したこともあり、十分な成果発表を行えなかった。本年度は解析および、成果の発表に重点を置く予定である。研究費の繰り越し分を含め、研究費は主としてデータ整理のための消耗品購入や人件費、内外の学会発表の旅費、成果発信のための投稿料、別刷り代等に充てる予定である。
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