研究概要 |
カロテノイドの抗酸化作用は喫煙のように生体内酸化ストレスが強い状態でより顕著になると考えられる。本研究は地域からの無作為抽出中高年者約2,000人を対象として、知能の加齢変化に対する喫煙とカロテノイド摂取との作用を縦断的に検討し、①加齢による知能低下を喫煙は加速し、カロテノイドは減弱する、②加齢による知能低下をカロテノイドが抑制する作用は喫煙者でより強く現れる、という2つの仮説を検証することを目的とした。 知能の指標としてはウェクスラー成人知能検査簡易版(下位尺度;知識、類似、絵画完成、符号)と数唱検査を用い、平成23年度には知能の加齢に伴う縦断的変化が知能の側面によって異なることを示すと共に喫煙が知能の加齢変化に負の効果を示すことを明らかにした。 平成24年度にはカロテノイド摂取が知能の加齢変化に及ぼす影響について縦断解析を行い、知識得点や類似得点の加齢変化にβカロテン、αカロテン、クリプトキサンチンや果物摂取量が正の効果を示すことを明らかにした。 平成25年度には喫煙とカロテノイド摂取の交互作用が知能の加齢変化に与える影響について解析し、男性では知識得点の加齢変化に対してα-カロテン×喫煙の交互作用が有意(p=0.0451)、女性の知識得点の加齢変化に対して果物×喫煙の交互作用が有意(p=0.0118)、α-カロテン×喫煙が有意傾向(p=0.0629)、女性の符号得点の加齢変化に対してβ-カロテン×喫煙が有意(p=0.0057)、果物×喫煙が有意傾向(p=0.0442)を示し、いずれも低カロテノイド摂取・喫煙群が高カロテノイド摂取・非喫煙群より知能が低いという結果であった。 3年間の成果として①加齢による知能低下を喫煙は加速し、カロテノイドは減弱すること、②加齢による知能低下をカロテノイドが抑制する作用は喫煙者でより強いこと、を明らかにし、本研究の目的をすべて達成した。
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