本研究では、ヤマブシタケ(Hericium erinaceum)、ヤマチャタケ(Flammulina velutipes)、マイタケ(Glifola frondosa)菌床及びマツタケ(Tricholoma matsutake)に含まれる総脂質およびアルカリ安定化脂質の含量とその構造解析および免疫賦活作用を検討した。 薄層クロマトグラフィーを用いて各種キノコの脂質成分の分布を検討したところ、ヤマブシタケ、ヤマチャタケ、マイタケ菌床及びマツタケには、エノキ、マイタケに含まれる構造既知のGSL-1及びGSL-2と同じRf値にスポットが確認された。また、マツタケのGSL-1をMALDI-TOF/MS解析した結果、m/z 766を中心とした -[M+Na]+疑似分子イオンを検出した。この結果からヤマブシタケ、ヤマチャタケ、マイタケ菌床及びマツタケには、エノキ、マイタケと類似した糖脂質glucosyl-ceramidoが含まれることが推察された。 マチャタケ、ヤマブシタケおよびマツタケの総脂質を腹腔内に投与したマウス腹腔内の白血球数は30%グリセリン/生理食塩水のみを投与した対照群に比べて著しく高い値を示した。この結果から、マウス腹腔内に投与したきのこ脂質成分は腸管および腹膜から吸収されることなく、マクロファージ・好中球などの白血球に抗原認識されていることが明らかとなった。ヤマチャタケ、ヤマブシタケおよびマツタケは属レベルが異なるものの、いずれの総脂質でも免疫賦活作用が明らかにされていることから、きのこ総脂質における免疫賦活作用は担子菌門共通である可能性が示唆された。
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