研究課題/領域番号 |
23500989
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研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
天倉 吉章 松山大学, 薬学部, 准教授 (50321857)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アリル炭化水素受容体 / 主食 / 天然物 / 食生活 / 食育 |
研究概要 |
我々はこれまで,天然由来のアリル炭化水素受容体(AhR)活性成分の共通特性として,レスベラトロールのような健康維持に寄与する有効成分であることを見出している.またごく最近,AhRを介した大腸がん発症予防機序が解明された.そこで,本研究では日々食する主食食材に着目し,主食食材中の天然AhR活性成分について明らかにし,それらの大腸がん発症予防効果について実証するとともに,主食を軸とする食生活の健康維持における重要性,さらに食育のエビデンスへと展開するための研究基盤の確立を目指す.23年度は,主食食材(穀類や野菜)中の天然AhR活性化成分の探索について実施した.まず主食食材として,5種の穀類〔米,胚芽押麦,発芽玄米,玄米(黒米),もちきび〕および13種の野菜類(青ネギ,オクラ,カボチャ,キャベツ,キュウリ,ダイコン,トマト,ニンジン,ハクサイ,ピーマン,ブロッコリー,ホウレンソウ,レタス)について,それぞれエタノール抽出物を調製し,レポータージーンアッセイ(ケイラックスアッセイ)を指標にAhR活性を評価した.その結果,穀類の中では白米,胚芽押麦抽出物に,また野菜の中ではホウレンソウ,レタス,ブロッコリーにAhR活性が認められた.活性の認められた試料(米,ブロッコリー)について,それぞれn-ヘキサンおよび酢酸エチル分画物を調製し,AhR活性を測定したところ,n-ヘキサンおよび酢酸エチル分画物に活性が認められた.今回の検討で,主食食材中に天然AhR活性成分の存在が示唆され,AhR活性画分を絞り込むことができたことは意義深い.さらにブロッコリーの活性画分からは,neoglucobrassicin,guanosineなどの化合物を単離,同定することができた.個々の化合物のAhR活性については現在検討中である.米抽出物およびブロッコリー抽出物について,さらに活性画分の成分精査を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主食食材の中にAhR活性を示すようなものがあるかどうか,まずその目星をつけることが重要な点である.検討した結果,一部食材にAhR活性が認められ,さらに活性画分まで絞り込むことが出来ており,従来の計画通りの方針で研究を進めることが出来る.従って,研究計画どおりに順調に進捗している.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画のとおり,主食食材中の天然AhR活性化成分の解明を目指し,活性化成分の特性を明らかにする.さらに,それら天然AhR活性化成分をプローブとしたAhRを介したβ-カテニン分解促進作用などを見ることで,大腸がん発症予防作用について検討する.また消化管粘膜免疫系への作用解明として,一次免疫応答に役割を担っている樹状細胞について,分化およびサイトカイン産生への影響を調べることで,抗炎症および腸内環境改善作用を評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用の助成金が生じたのは,予算を必要とする活性測定,カラムクロマトグラフィーを集中して行う時期が,ちょうど年度末付近にずれたことが主な理由である.研究自体は当初の研究計画どおりに進捗している.
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