研究課題/領域番号 |
23500992
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研究機関 | 東京農業大学短期大学部 |
研究代表者 |
古庄 律 東京農業大学短期大学部, その他部局等, 教授 (50238680)
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研究分担者 |
石田 裕 東京農業大学短期大学部, その他部局等, 教授 (60248937)
谷岡 由梨 東京農業大学短期大学部, その他部局等, 助教 (30553250)
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キーワード | ムクナ / 抗酸化性 / パーキンソン病 / L-dopa |
研究概要 |
本年度は、ムクナ種子を利用した味噌様発酵食品および豆腐様食品を製造し、官能評価を行うとともにL-dopaの残存量を測定し、パーキンソン病者用食品を開発することでムクナ種子の利用価値について考察した。 【方法】[1]発酵食品の製造:ミルるで荒く粉砕したムクナ種子を一晩吸水させ、オートクレイブで蒸煮し、麹と塩を混合した。30℃で3カ月熟成させ、発酵開始から2週間ごとに合計7回100gずつサンプリングを行った。試料は凍結乾燥後に粉末にし、全窒素量と可溶性窒素量、ホルモール窒素量、pH、塩分、L‐dopa量を測定した。[2]豆腐様食品の製造:ムクナ種子を1昼夜吸水させた後、ムクナ:水=3:1の割合で混合してミキサーにかけたものを漉し袋で濾過し投入を調製した。これに寒天とくず粉を加えて加熱し、型入れして冷却し、ゲル状の豆腐様食品を製造した。製品についてL‐dopaの量を測定するとともに官能評価を行った。 結果:[1]ムクナ発酵食品は、熟成期間中の全窒素量は一定で変化がなかった。可溶性窒素およびホルモール窒素は12週目まで上昇し以降は減少した。pHは弱酸性で一定で塩分も10%前後で一定だった。L-dopaは熟成開始から2週目で大幅に減少し、2週目から8週目までは緩やかに減少したが、その後はほぼ一定だった。色調は褐変が進行により味噌よりも濃い褐色を呈したが、味は味噌よりも甘味が強く、良食味の発酵食品であった。[2]豆腐様食品については、L-dopaを約3g/100gも含んでいた。食味はムクナ本来の味が強いが食べやすく、ゴマ豆腐に近い弾力性のある食感であった。以上のことから、これらの食品がパーキンソン病の治療食として活用できると期待された。 今年度は、動物試験、細胞レベルでの抗酸化性およびパーキンソン病に対しての評価には至らなかったため、これらの製造した食品を用いて次年度に実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、ムクナ種子を用いた味噌様発酵食品および豆腐様食品の開発を中心に研究を行った。この理由は、前年度の試作において発酵食品中にL-dopaがほとんど検出されなかったため、浸漬方法などを検討してL-dopaを熟成終了時に残存させる方法を検討するととも、発酵食品以外のムクナ種子の加工利用法により高L-dopa食品を開発するためであった。検討の結果、L-dopaを発酵食品および豆腐用食品に残存させることが可能となった。 これらの経緯から当初予定していた、実験動物および細胞を用いた、抗酸化性およびパーキンソン病に対する影響を検討するまでには至らなかった。しかしながら、前年度末に立案した研究計画であるムクナ種子を利用した食品の製造という点では、目標を達成したことから、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2年間の研究成果として、ムクナ種子加工の製造においてL-dopaを含有する製品の開発に成功した。また、抗酸化性の評価としてDPPHラジカル反応により、ムクナ種子抽出液中に抗酸化性が認められるという結果を見出した。これらの研究結果をもとに研究最終年度となる今年度は、ムクナ種子およびその加工品を飼料中に添加して6-ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)により誘導されるパーキンソン病モデル動物に摂取させ、行動学的変化(回転運動)と組織学的変化により評価を行う。具体的には、6-OHDAを脳内に投与し、5週間経過させたのち、ドーパミン受容体作用薬であるアポモルフィンを投与し、投与後30分間の動物の回転運動を計測する。この実験において、ムクナ種子およびその加工品を摂取した動物と非摂取動物との行動変化を比較する。また、脳の凍結切片を作成して黒質神経細胞の染色度を比較し、ドーパミン前駆体としてだけでなく抗酸化性物質として機能したかどうかにいても解析する。 また、肝由来細胞および脳神経由来細胞にムクナ抽出液を添加し、DPPHラジカル反応を利用した抗酸化性試験を実施し、ムクナ種子由来成分の抗酸化性についてin vitroでの評価も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、今年度の繰り越し額80千円と合わせて580千円を予定している。研究費の使用計画は、以下の2研究課題について配分する。 ①6-OHDAに誘導されるパーキンソン病モデル動物の行動学的および組織学的変化に及ぼすムクナ種子およびムクナ種子加工品摂取の影響(50万円:実験動物購入費、試験飼料費、組織切片作成費、試薬・実験器具費) ②ムクナ種子およびムクナ種子加工品の抽出液中に含まれる成分の抗酸化性評価(8万円:細胞培養用実験試薬・器具類の購入費) これらの課題は、当初の研究計画中に盛り込まれた研究課題であり、研究費の配分割合は研究分担者のエフォートを反映せていることから妥当性のある使用計画である。
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