研究課題/領域番号 |
23500996
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
庄司 俊彦 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹研究所・栽培・流通利用研究領域, 主任研究員 (90582510)
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研究分担者 |
三浦 富智 弘前大学, 保健学研究科, 准教授 (20261456)
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キーワード | apple / procyanidins |
研究概要 |
リンゴ果実に含まれるポリフェノールの一種であるプロシアニジン類(以下、APC)の動脈硬化予防効果を検討するため、ApE欠損マウスおよび培養細胞を用いて研究を行なっている。 4週齢のApoE欠損マウス(ApoE-/-)と正常C57BL/6マウスを1週間の予備飼育後、それぞれnormal diet(ND)投与群(MF飼料)とhigh-fat diet(HFD)投与群(AIN-93G試料)の2群に分け、それぞれに、0.5%APC水溶液または蒸留水を自由飲水により連続摂取させた。APC投与20週後に、麻酔下で採血し、脂肪重量評価、病理組織学的評価、遺伝子発現解析のための組織を採取した。その結果、ApoE欠損マウスのHFD/蒸溜水投与群は、ND/蒸溜水投与群に比べ有意な体重増加が認めれた(p<0.05)が、HFD/APC投与群では、体重増加が抑制されていた。同様に、HFD/蒸留水群で、内臓脂肪、精巣周囲脂肪、腎臓周囲脂肪および総脂肪重量が有意P<0.050)に増加した。しかし、HFD/APC投与群では対照群レベルまで抑制された。ApoE欠損マウスのHFD/蒸留水対照群では肝小葉中心性に広範な肝細胞への脂肪沈着が認められ、大滴性脂肪肝が疑われる組織像を呈していたが、HFD/APC投与群では顕著な脂肪沈着は認められず、APC投与により、HFD誘発性の脂肪肝発症が抑制されたと考えられた。ApoE欠損マウスのHFD/蒸留水対照群では、明瞭なアテローム性動脈硬化像は認められなかったが、腹腔静脈においてフィブリン沈着を伴う血栓様構造が認められた。しかしながら、これらの病巣はND群およびHFD/APC投与群では認められなかった。 作用機作を検討するため培養細胞(RAW264.7 細胞及び3T3-L1 細胞)を用いて、それぞれが産生するサイトカインなどの関係を解析し、APCの作用を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
APCによる動脈硬化予防効果の検討については、概ね順調に進行しているが、動物試験のn数を増やし引き続き検討する必要がある。試験期間が20週間であるため、研究の進行に時間をようする。また、動脈硬化に関連する遺伝子のスカベンジャーおよびマクロファージ接着に関連する遺伝子としてLox-1、Cd36、Aim、Vcam-1およびCd44、アディポカイン・サイトカインとしてTNF、IL-6、Adipoq、MCP-1およびCXCL10、抗酸化関連遺伝子としてSod1、Sod2、Gst、Pparγ、Pparα、Gpx1、Gpx2およびCat、糖代謝関連遺伝子としてFasnおよびPck1を定量解析を計画しており、平成25年度に実施予定である。また、培養細胞試験系での評価は試薬の酸化LDLの納入が不定期であるため。試験系が未だ確立されておらず、早急に試験系を確立する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
酸化LDLを使って細胞を刺激し、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6)やアディポカイン(レジスチンやアディポネクチン)などの生理活性物質の産生を評価する試験系を早急に確立する。また、動物試験の結果については、遺伝子発現解析を中心に、引き続き検討を加える予定である。なお、次年度末に行われる学会において報告する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度発生した残額(386,156円)は効率的に費用を使用した結果であり、次年度における動物試験における遺伝子発現解析に使用するPCR用試薬の購入、および培養細胞試験におけるサイトカイン測定用のELISAキットの購入と合わせて使用する予定である。また、学会発表にかかる旅費などの経費についても使用する予定である。
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