研究課題
ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ヒツジといった家畜だけでなく、シカやイノシシ等の野生動物を中間宿主とする寄生虫に、住肉胞子虫がある。住肉胞子虫は、1980年代に、ブタの筋肉中に検出されたのが、最初の学術記載となっている。我が国の食習慣の一つに、獣肉の生食がある。馬肉の生食、すなわち馬刺しの喫食によって食中毒が発生しており、その原因を解析したところ、フェイヤー住肉胞子虫の寄生が確認された。さらに、下痢を誘発する直接的物質の同定を試みた。過去の研究から推測されたタンパク質に焦点を絞り、推定タンパク質を虫体から分離した。精製したタンパク質の下痢誘発活性を確認し、住肉胞子虫がもつタンパク質が、ヒトに食中毒を起こすことを明らかにした。住肉胞子虫由来食中毒原因タンパク質のアミノ酸配列の決定、遺伝子のクローニング、組換えタンパク質の作製を行い、同タンパク質が、アクチン脱重合因子であることを明らかにした。実験的に同タンパク質に下痢誘発能があることを確認し、食中毒危害性を明瞭にした。加熱不十分のシカニクを喫食しての食中毒事例が発生した。疫学情報から、シカニクが原因食として疑われ、寄生虫学的検査を行ったところ、患者喫食シカニク中に数種類の住肉胞子虫が寄生していることが明らかになった。フェイヤー住肉胞子虫のアクチン脱重合因子が毒性をもつことから、シカニクに寄生する住肉胞子虫に、同脱重合因子と類似性を示すタンパク質があるか検索したところ、抗原性を同一にする毒性タンパク質が存在した。以上から、寄生虫がもつタンパク質が毒性を示す形の食中毒、すなわち、寄生虫毒素性食中毒が、家畜や野生動物の肉を原因として広く存在することが明らかになった。住肉胞子虫の危害を防止する方法として、肉の冷凍条件を検討した。‐20℃以下で48時間以上の冷凍を行えば、肉中の住肉胞子虫が持つ、食中毒危害性が消失することを明らかにした。
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