ダイエット食品素材のコレウス・フォルスコリ(CFE)は、マウスにおいて低用量で肝薬物代謝酵素のシトクロームP450(CYP)(特に2B、2C、3Aタイプ)を強く誘導し、高用量では脂肪肝を惹起した。CFEの低用量で惹起される肝CYP誘導を指標として、主要栄養素の影響を検討したところ、スターチ含量の高い飼料条件で肝CYP誘導が著しかった。CFEによるCYPの誘導は肝臓だけでなく腸管でも認められ、腸管のCYP誘導はCFE摂取中止によって肝臓よりも速やかに回復した。in vivo実験において、CFEはマウスではワルファリン(抗凝固薬)、また、ラットではトルブタミド(経口血糖降下薬)の薬効を、肝CYP2Cの誘導を介して減弱させることが明らかとなった。CFEはin vivoではCYPを誘導するが、in vitroではCYPを阻害した。in vivoにおいてCYP誘導や脂肪肝を惹起するCFE中の成分は、ヘキサンと水には難溶でメタノールに容易にとける成分であった。CFE粗分画を逆相の分取HPLCによってさらに分画し、in vitroにおけるCYP阻害作用を検討したところ、複数のフラクションに阻害作用が検出された。また、別途、CFE粗分画をシリカゲルクロマトによって5つのフラクションに分画し、得られた試料をマウスに混餌投与して、in vivoにおける肝CYP誘導を測定したところ、この検討においても複数のフラクションにCYP誘導活性が認められた。CFE中の既知の主要成分であるフォルスコリンには、in vivoにおけるCYP誘導も脂肪肝の惹起も認められなかった。以上の結果より、CFE中に存在するCYP誘導や脂肪肝を惹起する成分は、フォルスコリン以外の複数の成分と推定された。
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