研究課題/領域番号 |
23501000
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
名越 利幸 岩手大学, 教育学部, 教授 (10527138)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 局地気象 / 数値シミュレーション / 大気環境教育 / 予報モデル / 気象庁 |
研究概要 |
気象庁の現業で使用される「気象庁数値予報モデル」は気象学の専門家への貸与のケースはあるが,義務教育の子ども達への利用を視野に入れた貸与は,前例がない。そこで,本研究の目的は,簡単に実験の設定ができる入力インターフェースを開発することで,中学生による地域の大気環境調査をねらいとした「気象庁数値予報モデル」による3次元数値実験を教育の現場で試行するシステムの開発を行い,その数値実験結果から,中学生への数値シミュレーションの教育効果を検証することを目的とする。その方策として,(1)学校パソコン利用のためのDVD版プログラムソースによる数値実験手法の開発,(2)数値実験条件設定のための教育版インターフェースの作成を目標に研究してきた。 本年度は,各種設定のための入力インターフェースの開発と3次元大気環境数値実験システムの教材化を試みた。授業用PCの購入に関して,LINUXとウィンドウズのハードとの相性が難しく高速CPUを搭載したポータブルパソコンの選定と購入が予定より遅くなった。また,気象庁NHMソフトが外部LAN環境からなかなか作動しなっかったため,数回,気象庁に訪問しその解決に邁進した。一方,名古屋大学が開発した気象シミュレーションソフトに関してもトライし,初期目的の盛岡付近のシミュレーションの作動を確認できた。この成果に関しては,日本科学教育学会東北・北海道支部大会で口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先ず,数値実験などがめざましく発展しているアメリカ気象学会の現状などを踏まえるべく,ワシントンにある気象教育セッションを訪問し,教育グループ7名との協議を行った。その結果,義務教育年齢の生徒に,3次元数値シミュレーションを行った教育実践はないとの結果を受け,本研究の先駆性が確認された。 次に,全体のシステム構築を行うために,高速CPUを搭載したコンピュータ10台及び外付けハードディスクを準備した。これに当たり,リナックスOSに対応するハード(DVD,ハードディスク)の相性が難しく,選定が遅くなり,購入も遅れた。現在では,中学校の授業で行えるハード環境になっている。ポータブルPCは,i7をCPUとするマシンで,4ギガのメモリーを装着するものである。
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今後の研究の推進方策 |
<数値実験条件設定のための教育版インターフェースの作成>気象庁の現業で使用している数値モデルであるために,FORTRANという数値計算言語でプログラムが書かれており,UNIXというOS上で動作するため,中学生の使用は困難と考えられてきた。そこで,大気の運動を支配している連立偏微分方程式を解くための初期・境界条件を中学生でも設定が容易に行えるようなインターフェース(プログラム開発)を作成することで,直感的な条件設定で動作するように工夫しようと考えた。ここで言う直感的とは,日本地図上から領域を指定したり,時間ステップや3次元格子点間隔などを,ウインドウズのプルダウンメニューなどで,ワンクリックで指定しようとするものである。インターフェースの操作性,視覚化など,あくまでも中学生の教育利用を常に意識して開発を試みる。初期条件や境界条件などは,典型的な例を数例用意し,その物理的な意味付けを画面内に表記したりして,生徒への理解を促す工夫を考える。このような意図で,教育版インターフェースを開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度の調査・研究の成果を受け,モデルケースの数値実験の試行段階での完成をめざす。完成時に、40人の生徒が利用できるような環境を整えるために、高速CPU搭載コンピュータ(消耗品費)をさらに10台(計20台(2人に1台体制))そろえる。一方,数値実験の各種設定を行う中学生用インターフェースのプログラム作成(消耗品費・謝金)を行う。その中で,附属中学校教諭と議論し,より生徒にとって利用しやすいものへ改善していく。この時期に,研究経過の中間報告を,日本科学教育学会,日本理科教育学会,日本地学教育学会,日本気象学会で,口頭発表(国内旅費)する。
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