定量的な実験を行うためには、体積を正確かつ簡単、確実にはかる方法が必要であるため、これについて引き続き検討した。広く使われている駒込ピペットや目盛付試験管の代わりにディスポーザブルシリンジを用いると、正確な体積を容易にはかり取れ、定量性のよい実験が容易に行える。これを中心に使用できるような実験条件とすることによって、操作に熟練を要する器具は使わないで精密な定量実験を行うことができた。逆に、全ての試薬溶液、試料溶液を1 mL単位で使用する実験にすることで、小学生でも容易に十分な定量性のある実験も行えた。さらに、0.1 mLを下回るような少量の溶液を簡単にはかり取るための安価な器具の作成およびそれを使った実験についても検討した。 これまで開発、改良を続けてきた、発光ダイオードとフォトダイオードを用いた簡易型の吸光光度計を応用して、指示薬の濃度を測定を測定し、化学平衡について理解してその平衡定数を求める実験が容易に行えた。また、連続変化法によって錯体の組成を決定する実験もこの簡易型の吸光光度計で行え、上で述べたディスポーザブルシリンジを用いた溶液調製方法と組み合わせた実験方法によって、大学の学生実験において限られた時間内で多人数が一斉に正確な実験を行えるようにした。吸光光度計を発展させた簡易型の蛍光光度計を用いると、蛍光を有する有機化合物の定量や、蛍光試薬を使って極微量の金属の定量が行えた。
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