研究課題/領域番号 |
23501008
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
植松 晴子 (小松 晴子) 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (70225572)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 協同学習型授業 / 物理概念 / チュートリアル |
研究概要 |
1 協同学習形式の授業(チュートリアル)の試行チュートリアル方式を先進的に開発しているメリーランド大学のRedish教授のグループと研究交流を行いながら,同大学で開発された教材を用い,それを翻訳したものを東京学芸大学と名城大学において試行した。学習到達度の評価のための課題やテストの問題も,同グループと交流を行いながら作成し実施した。チュートリアルにおける協同学習の様子をビデオ撮影し,分析した。また,授業前後にFCIを実施して,この授業形式の効果を測った。協同学習の補助にあたったTAの報告やFCIの結果から,チュートリアルで扱った物理概念の獲得について,従来型の演習授業に比べて格段に向上が見られた。予測された課題として,用いた教材の設定の中に,日米の文化的背景の違いによる適不適が明らかになった。また,協同学習によって素朴概念を一見克服したようであっても,状況の違いや時間の経過によって,素朴概念は根強く残ることが新しい課題として得られた。2 個別聞き取り調査および分析チュートリアルでの設問やFCIのような基本的な問題について,学習者に個別に聞き取り調査を行い,分析した。協同学習により物理概念の獲得が進む一方で,学習者の得たものが授業の目的に適っているかどうかのフィードバックが十分でなく,概念の定着に問題を残していることが明らかになった。また,和訳版FCIの妥当性評価を目的とした調査を通じて,一つの設問の回答に至る思考過程が,学習者のもつ物理概念の把握に重要であることが分かった。この点に着目して,学習者のつまずきの要因を明らかにする方法の検討に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
協同学習形式の授業は計画通りに試行した。学習者が物理概念を獲得する上で,協同学習形式の授業は,従来型の演習授業に比べて非常に効果的であることが確かめられた。実施した授業における課題が,個別聞き取り調査によって明確になり,学習者のつまずきの要因を明らかにする手がかりが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の結果を省みて,日本の学習者の実態により適合するよう教材を改善し,それを用いて,協同学習型授業を再度東京学芸大学において実施する。この授業では,課題や試験などを通じて,学習者の得た物理概念を定着させるよう試みる。引き続き個別聞き取り調査を行い,学習者のつまずきの要因をより明確にする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する研究費があるのは,研究打ち合わせを電子メールに頼る状況が当初予定より多かったことと,一部のTAが授業の一環として参加したため,謝金の支出が当初予定より少なかったこととによる。一方,授業の受講者が増加しており,教材の大幅な補充が必要である。次年度の研究費は,主にこの補充と新規教材の開発に充てる。
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