1 協同学習形式の授業(チュートリアル)の改善 平成23~25年度に,メリーランド大学のレディッシュ教授らが開発した教材を用いてチュートリアル方式の授業を試行した.その結果に基づき,授業方法の改善を行った.具体的には,①日米のカリキュラムの違いに配慮し,グループ学習に入る直前の講義の位置づけを前回学習内容の確認に重点を置くものとし,グループ学習への有効な導入にすること②日米の文化的背景の違いを考慮して,設問や表現をより日本人にあったものにすること③グループ学習の最後に振り返り項目を設け,学習内容の定着を図るとともに教員が個々の学生の理解度や疑問を把握すること④学習するべき内容(物理概念)とともに,自ら論理的に思考を進める姿勢の重要性を強調することなどである.特に最終年度に取り組んだ④は,実践する授業が学習者に既存の授業観・学習観と合わない場合に,協同学習型授業の効果を阻害することがこれまでの実践から明らかになっており,授業観・学習観への働きかけの機会を増やすよう,ファシリテーションにあたるTAを増員した. 2 学習効果における問題 素朴概念が根強いことはよく知られており,協同学習によって一時克服したように見えても,再度現れる.特に試験の際に顕著であることが明らかになり,学習者が過去の演習問題と同様の文脈ととらえたとき,パターンマッチング的な解法を適用することが考えられる.入試によってこれが強化されている可能性があり,日本固有の問題としてとらえられる. 3 授業観・学習観の重要性の発信 協同学習型授業で学習者に効果的に物理概念を獲得させるためには,1に述べた授業観・学習観への働きかけが不可欠であることが明らかになってきたが,協同学習型授業の形式や手法が着目されることが多いので,学会やシンポジウム等で一貫した授業観・学習観への働きかけが重要であることを発信した.
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