研究課題/領域番号 |
23501010
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
坂口 雅彦 信州大学, 教育学部, 准教授 (30221998)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 理科教育 / 解剖教育 / 動物解剖 / 外来生物法 / 動物飼育 / FUMIEテスト / 心理テスト / アンケート調査 |
研究概要 |
実際に動物と触れ合ったり,動物を解剖して体内を観察した経験を持つ子供が年々少なくなってきている。生命についてより深く知り,生命の尊厳について明確な意識を持った子供を育むのは理科教育の大きな目標の1つである。本研究では動物飼育・動物解剖を体験することによる子供達の生命に対する意識変化の有無を調査することを目的としている。 呼吸・消化・排出・循環は小学校理科6年生と中学校理科で学習する内容である。平成23年度から施行されている小学校学習指導要領理科の内容の取扱いでは,取り扱うべき臓器名が記載されている。理科ではできるだけ自然の事象に触れさせることが基本であるにもかかわらず,学習指導要領の目標に「生物を愛護する態度を育てること」「生命を尊重する態度を育てること」とあるためか,実際に動物を解剖して臓器を観察することが行われなくなってきている。行われたとしても小学校では魚の死体解剖,中学校では豚の死体の一部やウシガエルの解剖が一部の熱心な先生方によって行われるにとどまっていた。さらにウシガエルが外来生物法の指定動物に指定されて許可が必要になって以後,中学校での動物解剖がほとんど行われなくなってきている。そこで,ウシガエルの解剖によって,中学校の生徒の生命尊重意識がどう変化するかを質問紙調査とFUMIEテストという心理テストで調査研究することを23年度行った。学校側の意向により統制群として従来通り動物解剖を行わない生徒の調査ができなかったので,比較して分析することができなかった。24年度以降統制群調査を実施する。 また,愛玩動物でなく,ハエ,蛆虫という嫌なイメージを持たれるキイロショウジョウバエを飼育してもらい,生物学研究でいかに役に立っているかを知ってもらうことで生命尊重意識変化が起こるかどうかの調査のための準備を23年度は行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の遂行には小中学校の教員・校長・児童生徒のご両親の研究へのご理解が必要である。しかし,学校現場は多忙で研究を受け入れる余裕がない事に加え,心理テストへの抵抗は根強く,なかなか本研究に協力していただける学校が見つからないのが現状である。またウシガエルを解剖する実験群と解剖をしない統制群を同一年度で実施したかったが,やっとご協力いただけた学校でも,全生徒に同じ教育を施すことが重要という教育方針があり,実験群のデータのみ取得できただけで,統制群と比較分析することが23年度はできなかったので明確な研究成果を得られなかった。24年度は統制群のデータが取得できる見込みであるので遅れてはいるが,24年度中には成果が得られる見込みである。 本研究のもう1つの課題である動物飼育の生命尊重意識変化に及ぼす影響評価はさらに遅れている。ウシガエルの解剖は指導単元として呼吸・消化・排出・循環があるため協力して頂けたが,動物飼育は中学校では授業として導入しにくく,ウシガエル解剖に協力いただいた学校でもまだ協力いただけるか返事がもらえていない。かといって小学校低学年ではFUMIEテストを児童に理解してもらい実施することが困難である。現在,感覚(脳・神経)という授業の前後で,ショウジョウバエの飼育と感覚(脳・神経)に役立っている例を提示するという内容で協力校を探している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
ウシガエルの解剖を行わない統制群については,23年度にウシガエルの解剖を行っていただいた協力校で実施して頂ける確約があるので研究は推進できる。 ショウジョウバエの飼育と生物学研究に役に立っていることの提示の授業にご協力いただける学校については,長野県だけでなく,広く全国のショウジョウバエ研究者に呼びかけ,その研究室の卒業生で中学校高等学校教員になっている方を紹介頂き,ご協力を呼び掛けていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の協力校が長野県内で見つかるか,県外で探す必要があるか(そのための旅費とするか)が年度末不明瞭な状況であったので,23年度研究費の若干額の使用を留保していた。今後の状況により旅費とするか物品費とする予定である。ショウジョウバエの飼育を授業で取り入れてもらうためには,感覚(脳・神経)での有効性を提示する必要があり,そのための物品等に研究費を使用する計画である。
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