研究課題/領域番号 |
23501014
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
伊藤 信成 三重大学, 教育学部, 准教授 (60344272)
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研究分担者 |
山縣 朋彦 文教大学, 教育学部, 教授 (70383213)
浜部 勝 日本女子大学, 理学部, 教授 (00156415)
西浦 慎悟 東京学芸大学, 教育学部, 助教 (50372454)
三戸 洋之 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), その他研究員 (00396805)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 天文学 / 自主学習 / 画像処理 |
研究概要 |
本研究では、系統的に現代天文学の事象を自主学習できる教材開発を目的としている。特徴としては、実際に天文学者が観測して取得したデータの解析を使用し、そのデータ解析を追体験することで、単なる知識伝達ではなく、解析原理や実作業など、より先端科学の現場に近い体験ができる体験実習型教材であることが挙げられる。また単発の教材ではなく、15 のテーマを選定しており、各テーマを実施することで、近傍から遠方宇宙までの天文現象に対する基本的な考え方を習得できることも特徴として挙げることができる。H23年度は、テーマの吟味とテーマ毎のデータ抽出、ドキュメントの作成を主たる作業とした。テーマの吟味は課題申請時にも行ったが、改めてデータ品質,解析の難易度, 科学的興味の観点から見直しを行い,15種のテーマの再選定を行った。また基本的に各テーマは独立であるが、天文学の段階的な学習の観点から、テーマ提示の順番についても検討を行った。データの抽出については、同一テーマに対して複数の天体が候補となること、同一の天体についても複数日の観測データがあることから、データの品質についてのチェックが必要となった。このため、H23年度に抽出を行ったのは6テーマとなった。ただし、抽出データについてはH24年度以降に行う予定であったデータ較正を前倒しで実施している。また分担者間で独立にデータ較正を行ったため、データ解析について新しい手法が提唱される場合もあり、自主学習教材という点から、より分かりやすい解析方法についても方法性が1つ示されつつある。ドキュメントについてはHTMLを利用し、テーマ間の連携や用語解説等が簡便に行えることを念頭に作成している。ドキュメントについては4テーマについて、科学的意義と基本解析方法について作成済みとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H23年度は、テーマの吟味とテーマ毎のデータ抽出、ドキュメントの作成を主たる作業とした。テーマの吟味は課題申請時にも行ったが、改めてデータ品質,解析の難易度, 科学的興味の観点から見直しを行い,15種のテーマの再選定を行った。また基本的に各テーマは独立であるが、天文学の段階的な学習の観点から、テーマ提示の順番についても検討を行った。データの抽出については、同一テーマに対して複数の天体が候補となること、同一の天体についても複数日の観測データがあることから、データの品質についてのチェックが必要となった。このため、H23年度に抽出を行ったのは6テーマにとどまった。ただし、抽出データについてはH24年度以降に行う予定であったデータ較正を前倒しで実施している。またドキュメントの作成については5テーマについて科学的意義の記述が終了している。これについてはほぼ予定通りである。ただし、データ解析部分の記述については、テーマ間でのデータ解析手法の統一が必要となるため、分担者間での協議が必要でH23年度は保留状態となっている。以上の状況から、計画より若干遅れ気味となっている。ただし、この遅れはH24年度には回復できるものと考えている。よって(3)を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針としては3つのステップを踏んでいく。最初のステップは、これまで分担者が並行して行ってきた各テーマ間の解析手法・解説手法について統一し、教材公開にあたっての基本フレームを構築することである。基本的な解析方法については共通しているので、テーマ間で共通する手法とテーマ固有の手法を切り分け、利用者が各々を意識しながら実習できるフレーム作成を行う。合わせて、結果の考察について、どの様に提示していくか詰めていく。次のステップとして、ユーザーインターフェースの整備である。本教材は最終的にはDVDおよびネットでの公開を想定しているが、ユーザー側の計算機環境は様々であるので、異なる環境下での利用に対応する必要がある。特に画像処理を行う際には専用の解析ソフトが必要になる。実習用の天文解析ソフトは既に存在するが, 画像処理・数値処理・グラフ作成といった解析作業が独立しているため、作業が煩雑になるとともに、個々のソフトの操作を習得する必要がある.そこで,既存のソフトを踏襲しつつ、多様な機能を統合することで、単一ソフトで解析のすべてのプロセスを行うことを目指す.最後に実際の教育現場での実施とフィードバックのステップである。本教材開発は、高校生~大学生が自主学習で利用することを目的としたものであるが、その公開に先立って、高校での試行を行うことにより、内容の理解・操作性・結果の再現性・考察の妥当性等について確認し、教材へのフィードバックを行う。教材の実践は、分担者の所属機関の近隣の協力校で行う。地学を開講している高校は少ないが、本教材は地学履修者に限定されるものではないので、多地域の高校と連携し、試行を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
H23年度は、当初計画していたデータ抽出作業において、データ較正作業を並行して行う必要が生じたため、作業時間がとられ、予定していた範囲のデータ抽出が進まなかった。そのため、データ保存・配信用に考えていた機器の調達がなくなり、当初計画していた予算執行ができなかった。H24年度は、分担者が独立して進めていた作業を集約し、共通のデータをもとに教材開発を進めることが1つの柱となる。また分担者が国内各地に分散していることから、H23年度に行う予定でいたデータ集約と配信、および各地からデータにアクセスするためのデータサーバの構築が必要となることから、H24年度前期に当該物品の調達を計画している。加えて、テーマ毎に抽出されたデータの較正に関連し、較正に必要なデータを新たに取得する必要が生じる。そのための物品(分光フィルター等)の購入も予定している。教材全体の完成はH25年度となる見込みだが、個々のテーマあるいは教材の公開システムについてはH24年度中にも成果として公開できると考えており、成果発表のための費用も計上する予定である。
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