研究課題/領域番号 |
23501019
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡崎 正和 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (40303193)
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キーワード | 科学教育 / 算数と数学の接続 / デザイン実験 / 数学教育認識論 / 数学教育方法論 / 理論形成 |
研究概要 |
24年度は,第一に,数学教育における認識論研究が学習指導と研究に及ぼす影響について,特に構成主義と社会文化主義の論争に注目しながら,それらを総合する視点をまとめるとともに,認識論研究の課題を明確にした。第二に,数学教育学の理論と実践の関係の問題を認識論と研究方法論の視点から吟味し,数学教育学研究で扱われる理論とは何か,また数学教育実践を理論化する際の種々の問題点について吟味した。第3に,経験的認識を理論的認識に接続する視点やそのための授業・カリキュラム構成に関して,ホリスティックな視座,教授学的状況論,推論-図-社会的次元の3つ組モデルの視点から検討し,小学校高学年での図形の動的な見方・包含関係・定義に関するデザイン実験,および中学1年の作図と移動の単元でのデザイン実験を通して,その実質を明らかにしていった。第4に,高等学校数学科での数学授業改善を目的とした文化的視点として,遊び,記号論的連鎖,文化に応じる数学教育などの視点を導出するとともに,高等学校数学科の授業観察を行い,それに基づいて,授業改善の為の検討を行った。 実践面では,中学1年での比例の単元の授業をデザインし,中学校教師と協働で,公立中学校1年1クラスで実施し,授業および対象生徒の活動,生徒のノートなどのデータを収集した。さらに,授業データをトランスクリプトにして,生徒達が関数の理解を高める様相を,表,式,グラフのシンボル化,シグナル化という現象に着目しながら質的分析を行った。そこでは,表,式,グラフおよび事象との関係を,生徒達がどのように理解するかのプロセスや手段を明らかにしつつ,前年までに実施していた小学校算数での授業分析と突き合わせながら,関数概念の発達の様相を明らかにしていった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度には,認識論や研究方法論と授業との関係を具体的に説明すること,算数から数学への移行過程を明確化すること,実践面では小中学校での授業研究を行うことにしていた。理論的研究,実践的研究ともに実施にうつすことができ,成果としても,学会誌,学会発表などに結びついている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,図形と関数概念に関わって,小中学校で実施した授業データの分析を行い,図形と関数における小中接続の様相を明らかにしていく。また,必要があれば再度実験授業も行う。 さらに,研究成果を振り返って,算数を数学に接続する教材,指導法,単元構成を含むカリキュラムを具体化していく。これらを教師達と協働で行い,報告書にまとめていきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
経費の使用計画として,カリキュラム構成を行う為の視点を吟味し,それに基づいて,図形と関数に関わる小中接続の様相とそれに基づくカリキュラムについて明らかにする。成果を国内学会,国際学会で発表する旅費に計上する。また,最終年度であり,成果を報告書などにまとめる為の経費を計上する。
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