研究課題/領域番号 |
23501025
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研究機関 | 川村学園女子大学 |
研究代表者 |
原田 耕平 川村学園女子大学, 教育学部, 教授 (10238181)
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キーワード | 推論的活動 / 算数指導法 |
研究概要 |
本研究の目的は、小学校1~3年生を対象とした縦断的研究法によって、子どもの推論的活動を支援する算数指導法を開発することである。本研究は3年間の継続研究であり、各年度を通じて子どもの推論的活動についての発達調査を実施するとともに、子どもの推論的活動を支援する算数指導法の理論的研究とその実証のための教授実験を行う。 平成24年度は研究の2年次であり、前年度に引き続き、子どもの推論的活動の発達特性を明らかにするためにピアジェの『意味の論理学』(1987)、子どもの推論の根源を探るためにピアジェの『可能性と必然性』(1981,1983)、ピアジェの後継者アンリケスの『理由の形成』(2004)等を考察した。調査問題の作成ではピアジェの実験問題を参照し、「全体と部分の関係」「長さに関する推論の合成」「面積に関する推論の合成」等を含む5題で構成した。この問題を用いて、1つの小学校で2年生と3年生(前年度から継続)を対象として発達調査を実施した。調査結果から、学年進行とともに、子どもの推論的活動が視覚的影響から解放されること、推論的連鎖が生み出され徐々に推論の合成が可能になることが明らかになった。 子どもの推論的活動を支援する算数指導法の開発では、ジュネーブ学派の「学習実験」(1974,1986)、カミイの「算数教授理論」(1973)等を手掛かりとして教授法の枠組みを構成した。教授実験は、2つの小学校で2年生(前年度から継続)を対象とし、単元「はこの形」(第3時直方体の面の構成と組み立て)および単元「分数」第2時(図形の分割と分数表現)において実施された。実験結果から、統制群に対し実験群では推論的活動が活発化し、予想に基づく推論、理由に基づく推論等が生まれ教授法の有用性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は研究の2年次であり、前年度に引き続き、理論的研究を実施するとともに、3つの公立小学校の研究協力によって調査と教授実験を実施した。1つの小学校では、子どもの推論的活動の発達特性を明確にするために2年生を対象として縦断的発達調査を実施した。他の2つに小学校では、子ども推論的活動を支援する算数指導法の開発のために2年生を対象として教授実験を行った。順調に研究成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、平成23年度から3つの公立小学校の研究協力を受け、研究を継続してきたが、25年度においてもこの3つの小学校の研究協力によって研究を継続できる体制にある。また25年度は、フランス人研究協力者を含めた研究協力者会議を計画し、本研究の理論的研究を精密にするとともに、本研究の学術的背景を明確にする予定である。研究成果の発表については、24年度の調査および教授実験の時期が、研究協力校の算数カリキュラムの計画から25年2~3月であり、研究結果の分析は平成25年度において実施されることになる。そのため24年度の研究成果を25年度の学会、研究会等で報告する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費については、「物品費」は、調査問題の作成費、教授実験のための教材作成費、教材開発費等に使用する予定である。「旅費」については、研究協力校における調査打合せおよび研究協議、フランス人研究者を含む研究協力者会議、研究成果の報告のための旅費を計画している。「人件費・謝金」については、研究協力校における調査担当者および教授実験担当者への謝金、研究協力者による専門的知識の提供および研究資料の提供に対する謝金を予定している。「その他」については、情報収集のための交通費、文献複写費、実験記録のDVD複写費等を予定している。
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