研究課題/領域番号 |
23501027
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
矢治 健太郎 立教大学, 理学部, 准教授 (10399305)
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研究分担者 |
大山 政光 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (80332716)
大朝 由美子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10397820)
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キーワード | 太陽 / 金星 / 太陽系 / ひので / あかつき / X線 / Hα / 磁場 |
研究概要 |
本年度は、太陽観測衛星「ひので」の観測データを中核として、教育プログラムの開発を進めた。昨年に引き続き、7-8月と12月には、ひので衛星と高校・公開天文台・科学館と共同観測を実施した。共同観測を行った高校の中には自身の観測データと比較して研究発表を行っている。立教大学では、ひので画像を使った授業実践・計算機実習を行った。本研究を進める上で、天文学会、地球惑星連合大会、太陽研究会など国内外の学会・研究会に出席し、ひので・あかつきの最新成果等の情報収集を行い、出席者らと情報交換、研究発表を行なった。あかつきは2011年6月にひのでとの太陽風の共同観測を行っており、その解析・議論が進行中である。 1月には秋田大学主催の地学セミナーにおいて高校生を対象にひのでのデータを使った解析実習を行った。解析テーマは「太陽の自転周期」「黒点の発達」「多波長による太陽画像の解析」などである。事前事後アンケートにより実習効果について分析し、問題点の把握に務めた。今後は各実習課題のパッケージ化を進める。 滋賀大学では、太陽・太陽系分野の総合的学習の一環として可視光・Hα線の波長による金星日面通過の観察会を開催した。観察会は教育学部生、教職員を対象とし、のべ100人以上の参加があった。また、京都府内高校2校に対して、太陽観測衛星「ひので」のデータを用いて講演を行った。 埼玉大学では、教育学部生を中心にHα線・Ca線・可視連続光を用いて「ひので」との同時地上観測及び定期的な太陽観測を継続している。観測データは、教育学部の教員養成系の講義に使用している。 以上の研究成果については、国内の学会や研究会で18件、国際会議でも3件の発表を行った。8月にひのでの国際会議(スコットランド)や国際天文学連合総会(中国北京)にて発表しており、海外の研究者からの関心をひいた。また、学会誌にも研究成果を報告している
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年に引き続き、ひので衛星と高校・公開天文台・科学館と共同観測を継続して実施していること、それにともなった各学校・施設が行った研究発表活動を追跡調査し、現状の問題点の把握に努めている。また、埼玉大学・滋賀大学でも、定期的な太陽観測を実施し、その観測データの取得や扱い方について習得している。共同観測にともない、観測データアーカイブも充実しており、埼玉大学は観測画像をホームページ上で公開している。ひのでの観測データを活用した解析実習も高校生を対象に実行することができ、その評価も実行している。今後の教育プログラム開発の素地は十分に整ったと考えている。並行して、研究成果も、学会・研究会等でコンスタントに報告している。 ただし、金星探査機「あかつき」のデータの教育活用が関係者とのサイエンスに関する議論にとどまっており、今後いかに教材化及び教育現場への実践に進めるかが課題である。 以上から、現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」と自己評価するものである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も、ひので衛星と高校・公開天文台・科学館との共同観測は継続する。次年度も太陽活動極大期が継続しており、学校・関連施設がいっそう共同観測に興味を示すことが期待される。ただし、過去の調査結果から「一部の画像データに活用に限られている」「データベースのアクセスが難しい」という声があり、研究活動へのステップアップを妨げる要因となっている。そこで 、共同観測及び研究活動を支援するために、ホームページ上で具体的なテーマや課題を提示したり、共同観測用のテキストを開発する。共同観測先の学校・施設に直接訪問することで観測 ・データ解析のサポートも行う。本年度は高校生対象のデータ解析実習を実現できたこともあり、この実習内容を行うテキストやデータセットを整備する。ひので観測データを活用した、学校教育現場でのデータ解析実習も積極的に行い、その評価に務める。 2012年4月に国立天文台ひので科学プロジェクトが「太陽磁場反転」に関する記者発表を行った。これは、太陽磁場の重要性を示唆 するもので、教育現場でも太陽磁場の重要性を理解・普及するためにも、太陽磁場に焦点を当てた教材や教育プログラムを提案・開発する。 研究代表者が次年度から国立天文台太陽観測所に移動するため、太陽の地上観測データも相補的に活用する。 あかつきについては、金星接近時に取得したデータの教材化・プログラム化を実現すると同時に、2015年のあかつきの金星再接近時にどんな教育プログラムが可能か検討する。 研究内容は積極的に国内の学会・研究会、国際会議等で積極的に発表し、論文投稿も進める予定である。以上を踏まえて、本研究課題の最終年度の総括を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費は、「ひので」「あかつき」の観測データ、各研究者が自身で取得したデータを解析するための計算機環境の整備(計算機、ハードディスク、ソフトウェア)や観測装置の整備のためである。科学教育・太陽物理学・惑星科学の研究動向・情報を得るための参考文献にも使用する。 旅費は、太陽物理学・惑星科学関係者・科学教育関係者との国内打ち合わせ、国内外での研究成果の報告、研究調査活動に使用する。研究成果は日本天文学会、天文教育普及研究会の年会、他各種研究会で報告する。特に、10月にワルシャワ(ポーランド)で行われる国際会議(CAP2013)、及び11月にはひのでサイエンス会議(Hinode-7)で、本研究の成果の発表を行う予定である。 謝金については、教材開発や成果公開の補助作業を行うアルバイトの雇用に必要である。 その他については、共同観測用のテキスト作成、研究成果を論文にまとめるための論文投稿料・別刷り代に使用する。 研究実績の概要に記したとおり、今年度は教材・プログラム開発のベースとなるひので観測データアーカイブの取得や、関係者との研究議論を進めることはできたが、一部の教材開発を具体的に進めることができなかったため、繰越金が発生した。繰越金については次年度の研究費と合わせて、教材開発のための計算機環境の整備に充てる予定である。
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