研究課題/領域番号 |
23501037
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
松村 敬治 西南学院大学, 人間科学部, 教授 (40157350)
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研究分担者 |
塩野 正明 西南学院大学, 人間科学部, 教授 (80235499)
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キーワード | シャボン玉 / セッケン膜 / 教材開発 / 干渉スペクトル / 膜測定 / 紫外可視分光 / 界面活性剤 |
研究概要 |
本研究の目的は、シャボン玉の測定法を確立し、シャボン玉の魅力を科学的に解明する教材を開発して提供することで理科教育の振興を図ることである。具体的には次に述べる3つのことを目的としている。1つ目は、シャボン玉の膜厚の測定を中心としたシャボン玉の測定法を確立することである。シャボン玉のさまざまな物性の中で、膜厚の測定にこだわる理由は、シャボン玉の美しさも、特殊な物性も、膜の厚さに由来しており、速やかに変動するシャボン玉の膜厚が測定できれば、シャボン玉の魅力の解明につながるからである。2つ目は、シャボン玉の膜厚を含めた測定システムを学校や地域社会の教材として提供するために、「シャボン玉の科学」の指導法を検討すると共に、操作性に優れた測定システムの開発を目的としている。3つ目は、作成した教材を地域社会へ向けた自然科学の啓蒙活動の中で公開し、理科教育の振興を図ることを目的としている。 続いて、平成24年度の研究実績について述べる。平面状のセッケン膜に対しては、すでに膜厚の測定法を確立していたが、今回、球状のシャボン玉に対して膜厚の測定法を確立することができた。膜厚計測では均一の大きさのシャボン玉を作る方法を工夫したことで、シャボン玉をモニターする最適の位置を指定して膜厚を決定できるようになった。また、前年度までは透過光だけでしか干渉スペクトルが測定できなかったが、今回、新たに反射プローブを導入することで、膜からの反射光の干渉スペクトルが観測できるようになった。 地域社会へ向けた自然科学の啓蒙活動では、本研究で培ったノウハウを生かして、「チルドレンズミュージアム」などで幼児や小・中学生や保護者を対象に講演会や体験学習会を開き、理科教育の振興を図った。また、シャボン玉の科学の教材化のために、シャボン玉の干渉スペクトルのシミュレーションを含めた解析ソフトを開発中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は次の3つのことを具体的な目的としている。① シャボン玉の膜厚の測定を中心としたシャボン玉の測定法を確立する。② シャボン玉の膜厚の測定システムを学校や地域社会の教材として提供するために、「シャボン玉の科学」の指導法を検討すると共に、安価で操作性に優れた測定システムの開発を行う。③ 作成した教材を地域社会へ向けた自然科学の啓蒙活動の中で公開し、理科教育の振興を図る。 2年目の平成24年度は、シャボン玉の測定法の確立、「シャボン玉の科学」の指導法の検討、および地域社会での自然科学の啓蒙活動と理科教育の振興を行い、3年間の達成目標のおよそ70%を達成した。その詳細は次のとおりである。 ①のシャボン玉膜の膜厚の測定法の確立に関して、干渉スペクトルの測定方法を見直すことで、平面状のセッケン膜に対してだけでなく、球状のシャボン玉に対しても膜厚の測定ができるようになった。特に、均一の大きさのシャボン玉を作る方法を開発したことで、シャボン玉の位置を指定して膜厚を測定できるようになった。また、新たに反射プローブを導入することで、反射光の干渉スペクトルが測定できるようになった。反射光の測定は、シャボン玉の色づきの解明につながるので重要である。 ②に関して、シャボン玉の膜厚の測定システムを教材として提供するために、スムージングやフィルターを導入することで測定ノイズの改善を行うことで、テキスト教材となるような干渉スペクトルを容易に測定できるようになった。現在、干渉スペクトルのシミュレーションによる解析ソフトを開発中である。 ③に関しては、チルドレンズミュージアムなどで小・中学生や保護者を対象に出前授業や体験学習を行い、理科教育の振興を図った。地域社会に、教材として提供するための操作性に優れたシャボン玉の測定システムの開発や、総合的な「シャボン玉の科学」の指導法については検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、シャボン玉の科学を地域社会へ向けた自然科学の啓蒙活動や小・中学校や高校の理科教育に提供するために、シャボン玉の測定法の確立や、その測定法を取り入れた教材作りに主眼を置いて研究を進めて行く。その詳細は、以下の4つの項目に記載する。 ①干渉スペクトルを測定するための最低限の性能を確保した廉価版の膜厚測定システムの構築を行う。特に照明用の廉価なハロゲンランプを光源に使用する方法や分光器の分解能や感度について検討を加えて最適のシステムを構築する予定である。 ②シャボン玉の透過光と反射光の干渉スペクトルを同時に観測するシステムを構築する。透過光と反射光では位相が逆転する(180°ずれる)が、これを直観的に示すには同じ膜厚に対して両者の干渉スペクトルを同時測定する必要がある。この位相の逆転をデモンストレーションでリアルタイムに示すことは教育的な価値があると考える。 ③シミュレーションの技法を駆使して、シャボン玉の干渉スペクトルの測定から膜厚決定までのルーチンをシステム化することでシャボン玉の膜厚の測定法を確立する。殆どの分光器は廉価なものも含めて、測定データをテキストファイルに出力するソフトが添付されている。そこで、テキストファイルのデータから膜厚を決定する解析ソフトを開発する。開発言語は殆どのパソコンで使え、軽いソフトでグラフィックが自在に使え、コストダウンにもつながるエクセルVBAを使用する予定である。 ④シャボン玉の科学の教材化に関しては、本研究で開発した測定システムを用いて児童・生徒がどのような自由研究ができるかを検討すると同時に、チルドレンズミュージアムなどの体験学習に教材を提供して教授法をチェックしながら、シャボン玉の魅力を通して科学の基礎を学習できるような教材を完成させる。また、これと並行して研究成果を学会発表や学術論文として公表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、物品費(設備備品費および消耗品費)に対して350,000円、旅費に対して100,000円、人件費・謝金に対して50,000円の使用を予定している。物品費は、実験材料の分光特性の検査や、廉価版の膜厚測定システムの構築や、科学教室のための消耗品の購入に使用する。旅費は、本研究の成果を学会発表するときに使用する。謝金の実験補助費は、本研究の成果を自然科学教室や出前授業で公開するときに、児童・生徒や保護者の安全確保と実験の補助を目的としてアルバイトの学生を雇用するために使用する。 続いて、研究費の具体的な使用計画についての詳細を述べる。最初に、物品費で自然科学教室や出前授業などで使うシャボン玉液の分光特性を調べるために、透過光測定用浸漬ユニットを購入する。この器具はシャボン玉液を入れた容器に直接挿入して検査できるので有効で手軽な検査法として活用できる。続いて、シャボン玉の干渉スペクトルを測定するための最低限の性能を確保した廉価版の膜厚測定システムを構築するために、分解能や感度の基準をクリアした安価で高性能な分光器を購入する。CCDアレイ検出器を用いた高速の可視分光器は国内外のいくつかのメーカーが多数の製品を販売しているが、その中から入手が容易で廉価な機器を選定してシステムを構築する予定である。 消耗品として、電子部品やガラス器具を購入する。電子部品は、現有のフーリエ変換赤外分光器用の検出器を製作するときに必要になる。ガラス器具は、自然科学教室や出前授業などで使用するシャボン玉液を調整するときに必要になる。 旅費は、三重大学で開催される日本科学教育学会に参加するときに使用する。謝金の実験補助費は、幼児や児童・生徒や保護者を対象にしたチルドレンズミュージアムでシャボン玉の科学を中心とした理科のブースの中で実験補助と安全確保を目的とした人員を確保するために使用する。
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