研究課題/領域番号 |
23501040
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研究機関 | サレジオ工業高等専門学校 |
研究代表者 |
齊籐 純 サレジオ工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (40450118)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | PBL教育 / 電気自動車 / ものづくり教育 |
研究概要 |
本申請「創意工夫を喚起する高専導入教科としての簡易自動車キットを用いた教育手法の評価」は実践的な技術者の育成のために、高専生の低学年における電気エネルギーの感覚的理解とものづくりに要求される複合的な能力(企画、設計、製作、評価、報告)の育成を図る教育方法の提案を目的とする。 これまでの学生の課外活動の指導経験から、学生自らが乗車するという体験が伴うもの作りはエネルギーの感覚的な理解に適しており、創作意欲や技術的な好奇心を喚起するのに有効なテーマであると考える。そこで電気工学科1年次の工学基礎の実習課題として学生達の設計による簡易電気自動車の製作と試乗を実施する。しかし乗車可能な車両を製作するには駆動部や操舵部など製作難度が高い機械部品が多い。そこで基本的な走行能力の確保のために操舵や駆動などの機能をモジュール化したキットを教材として製作する。これらの部品を組み合わせることで従動輪、操舵輪、駆動輪などを構成できる。シャーシは加工性を考慮してベニヤ板を使用し、これにキットを組み付けることで自由な構造・形状を持った車両を製作できる。キットにはモータドライバや計器も備え、走行速度と電圧・電流が表示される。試乗する際には表示される消費電力を記録することで、電気エネルギーの感覚的理解につながる。 実習内容は、(1)5~6名をグループにしてどのような車両を製作するのか話し合う。(2)決定内容をアイデアシートにまとめる。(3)企画内容を発表する。(4)車体を設計する。(5)車両製作作業を行う。作業日誌をつけて発見や疑問点を記録する。(6)車両が完成しだい試験走行を行って消費電力を計測する。(7)コンセプト設定から完成するまでの作業報告と電気エネルギーについてレポートで報告する。 実習終了後は実習内容や目標達成度について学生へのアンケートを行い、本教材を用いた実習課題の教育効果を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
教材として簡易電気自動車キットを開発して、これを用いたエネルギーの体感的理解と、ものづくりに携わる実践的なエンジニアに要求される複合的な能力の育成を目的とした実習を実施した。試作品で実習を実施した時は総作業時間が38.5時間(正課授業13.5時間、課外作業25時間)を要した。対して当該年度で製作した簡易自動車キットでは部品精度が飛躍的に向上したため、作業時間短縮に寄与。総作業時間は27時間(正課授業18時間、課外作業9時間)に短縮でき、学生の製作する車両の完成度も向上した。授業では6グループが製作に取り組み、すべてのグループが車両を完成させて試験走行を行うことができた。その試験走行にて消費電力の計測を行うことで実際の自分の運転と消費電力との関係を体感させることができた。また、試作品と比較して走行時の消費電力を1/3にまで削減でき、どの車両でも工作精度に極端な差異が無ければ同程度の消費電力で走行できることが確認できた。 実習後に実施した目標達成度のアンケートから、電気エネルギーの体感的理解についてはほぼ全員から達成できたという回答が得られた。課授業での実習であることから、授業時間内に作業が完了できることが望ましい。 今後は複合的な能力(企画・設計・製作・評価・報告)育成についても含め、今後もカリキュラムの再策定を行うとともに授業資料等の補助教材の充実も図っていく。授業用の専用モータドライバとして遠隔操作で停止させる機能を付与する予定であったが、開発が予定から遅れている。これについては次年度内の完成を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
本教材を用いた実習課題としては車両製作面と体感的教育については一定の成果を得ることができた。今後の重点課題としては複合的な能力(特に評価・報告)の育成を目的とした資料の充実と、校外への講座展開、授業用モータドライバの完成である。 現時点での体感的教育としては試験走行時に消費電力を読み取るのみで、走行車両に必要なエネルギーに関する解説が不足している。基礎理論もあわせて学ばせることで体験的理解と理論との合致をもって、より知識・理解の定着を図れるよう改善していきたい。次に、組み立てに用いる説明書等を作成して教材としての完成度を高めることで、本実習課題の一般化を目標として本研究申請者以外でも指導可能なものを目指す。また当該年度で完了しなかった授業用モータドライバについて、安定性向上だけでなく速度制限や遠隔操作による停車が行えるように改良していく予定である。 本教材を用いた学校外での出張授業を近隣の中学校と小学校と展開することを予定しており、科学・工学への興味付け、電気エネルギーの基礎知識、体験的理解を目的とした電気エネルギーを体感する講座を開講する。この開講においても受講者にアンケートを実施し、工学教育への導入教材としての有効性を評価する。現在、課外活動で学科学年を超越した学生有志達によって出張授業用のカートを本校デザイン科教員の指導のもとで設計し、車両製作を進めている。
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次年度の研究費の使用計画 |
前述したモータドライバの改良を行い、出張授業などで低学年の生徒が乗車した場合の安全性向上を図る。また、授業や学内実習や出張授業で用いる資料の充実を図り、体感的理解をより定着させるための補助教材を作成する。 また、本教材による教育効果について学会発表(日本工学教育協会を予定)をするとともに工学教育分野の学会誌に論文を投稿する予定である。 次年度の予算については上記内容について物品購入、資料製作、論文投稿、出張授業・学会発表の旅費等で使用する計画である。
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