研究課題/領域番号 |
23501042
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研究機関 | 金沢工業高等専門学校 |
研究代表者 |
土地 邦生 金沢工業高等専門学校, 電気電子工学科, 教授 (30390446)
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研究分担者 |
直江 伸至 金沢工業高等専門学校, 電気電子工学科, 教授 (00249781)
松本 裕 金沢工業高等専門学校, 電気電子工学科, 教授 (70469584)
オグントインボ ボラジ 金沢工業高等専門学校, 電気電子工学科, 講師 (90601328)
小川 隼人 金沢工業高等専門学校, 電気電子工学科, 講師 (20536734)
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キーワード | 工学教育 |
研究概要 |
平成23年5月に提出した平成23年度科学研究費助成事業交付申請書に記載の平成24年度研究実施計画は、1.教育用後輪駆動独立制御型EVの開発、2.教育用ハイブリッドEVの開発、3.学生実験への導入、である。 まず、後輪独立制御型EVの開発であるが、24年度は主に左右後輪に別々に取り付けられた4馬力直流モータの連携制御システムを開発した。本校電気電子工学科3年次の学生実験に導入し学生が自身の貸与パソコンで何時でもモータ連携制御システムを体験し基礎技術を学べるように、制御用マイコンに電子工作用学習資料の豊富なArduinoマイコンを用いセンサ制御を可能としたこと、また、市販の汎用マイコン(REVIVE USB)のソースコードを改良することでジョイスティックコントローラの電子制御を可能としたことである。これにより、低学年から高学年まで学生の幅広い学習技術レベルに対応できる教材を提供できる見込みである。次に、ハイブリッドEVの開発であるが、これは回生ブレーキ基礎技術の学習を開発目的とし本校電気電子工学科3年次の学生実験に導入予定である。24年度はハイブリッドEVの開発用EV、キャパシタEVを製作し基礎実験を実施した結果、電源電池として10個の電気二重層キャパシタを直列接続し総重量を200Kgとしたレーシングカート改造ハイブリッドEVで回生ブレーキの学生実験ができる見込みとなり、回生ブレーキ技術教育用EVを製作した。 本研究の目的の一つはEV実験を通したモータ制御技術の習得と工学と英語の協同学習であり、技術のグローバル化に対応できる技術系グローバル人材の教育育成に繋げることである。この視点で実験指導書を作成し、学術雑誌「創造技術教育」に研究成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は「実学型EVを開発し、このEVを用いて外国人教員が電気電子工学基礎技術を教授することが技術のグローバル化に有効な教育方法であることを本校学生実験で明らかにすること」である。23年度からの2年間の研究を通じて、技術のグローバル化に対応できる人材、技術系グローバル人材とは多民族で構成されるチームにおいて他人との文化や習慣の違いを理解し受け入れながら日本の技術を活かした寄与や貢献ができる人材であり、その技術や技能が習得できる教材が実学型EVであろうとの結論に至りつつある。 経済発展の中心が東アジアからインド、東南・南アジアに移りつつある状況で、発展途上国諸国で立ち上がるプロジェクトは多民族で構成される多国籍技術者集団となることも多いであろう。このようなプロジェクトを想定すると、まずは、マレーシア人、タイ人、シンガポール人等、多民族と一緒に仕事ができる人材育成が重要で、日本人の感性を活かし技術的な貢献をすることが技術のグローバル化ではないかと考えている。本校の外国人教員の出身国は米国、ベトナム、ペルー他と多く、多種で多様な文化や考え方を持っている。少人数で多くの外国人教員と議論を重ねながら数種類の実学型EVを製作することは技術のグローバル化に対応できる人材育成に有効な教育方法であろう。今後の実学型EVの開発に重要な知見を得た。 なお、2台の実学型EV、後輪駆動独立制御型EVおよびハイブリッドEVの開発は交付申請書通り概ね順調で、後輪駆動独立制御型EVは25年度後期、ハイブリッド型EVは26年度の学生実験から供用可能とする予定で開発を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本校は金沢工業大学の姉妹校であるので同校の設備を利用できる。同校では学生同士が学び合う革新的な学びの場としてイノベーション&デザインスタジオ(23号館)が竣工した。チームで問題発見解決に取り組むプロジェクトデザイン教育を産学連携、地域連携、大学間連携で実施するために整備された設備で、本研究でも積極的に利用する予定である。技術のグローバル化に対応できる技術系グローバル人材の教育には、グループに多様な文化や考え方を持つ技術者の参加が不可欠と思われる。そこで、本校他学科の外国人教員、石川県工業試験場、地域企業、金沢工大技能職員など多様な人材のEV製作実験授業への招聘を検討する。平成23年度基盤研究(C)(一般)研究計画調書2頁図4に示した実学型EV開発連携チームを技術系グローバル人材の教育にも活用し、多国籍技術者集団を模したEV製作実験グループを構成し授業を実施、技術系グローバル人材育成の教育効果を確認する。 また、実学型EVの製作では、まず後輪駆動独立制御型EVの教育用プログラムを開発する。このプログラムはモータの連携制御基本技術を習得するためのものでEV製作実験授業に利用し指導書にも利用される予定である。また、教育用ハイブリッドEVの制御システムの開発も25年度の研究課題である。25年度は本研究の最終年度、技術系グローバル人材の教育に不可欠な実学型EVと教育カリキュラムを開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費は教育用ハイブリッドEVの開発にが充当される。24年度末に納品されたハイブリッドEVは中古のエンジン付きレーシングカートにモータが追加されただけのものであり、完成にはモータコントローラー、電気二重層キャパシタ、制御用マイコン、車両重量調整装置等の追加とそれらの制御システムの開発が不可欠である。その費用としては約50~60万円が見込まれる。また、実学型EVは乗用型の教材である。安全や教材用としての最適化のために改良と改善が不可欠であり、40万円程度の費用を見込んでいる。
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