研究課題/領域番号 |
23501043
|
研究機関 | 豊田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
杉浦 藤虎 豊田工業高等専門学校, 電気・電子システム工学科, 教授 (70206407)
|
キーワード | 工学教育 / 創造性教育 / 高等専門学校 / 実践教育 / ものづくり |
研究概要 |
H24年度までに,それまでのサッカーロボットのキックデバイスやドリブルデバイスなどの不具合の修正と改良,および出前授業用ロボット操作体験システムの開発を行った。具体的にはロボカップ世界大会に向けて,新型ドリブル機構の設計とその性能確認を重点に学生主体で取り組ませた。新規に設計した新型ドリブル機構は,2011年モデルと比較してキャッチしたボールの保持力が強いため,ロボットに引きつけた状態でシュートを打つことが可能である。その結果,高精度のシュートや,相手ロボット頭上を越してパスしたボールが落ちた地点でピタッと止まる,バックスピンチップキックを可能にした。このキックを実現できるチームは世界的に見てもほとんどなく,我々のチーム唯一であると言ってよい。チーム内で先輩後輩の立場に関係なく,意見を言い合える環境とこれまでに培ってきた創造力の相乗効果により実現できたと考えている。 H24年5月初旬に開催されたロボカップジャパンオープンでその性能を検証し,有効性を確認した。そしてH24年6月中旬に行われた世界大会では世界の強豪を相手に準決勝まで進出した。惜しくも決勝に進めなかったが,みごと3位入賞を果たした。その後,ロボットフェスタやロボットシンポジウムなどへの出展や出前授業を8件,延べ13日間行い,学生主体で説明させるなど,コミュニケーション力の育成に力を注いできた。 さらに,幼児や小学生でも簡単にロボットの操作体験ができ,サッカーが楽しめるようにシステムを改良し,観客の年齢・知識等を反映して臨機応変に対応できるよう工夫を加えてきた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的の一つであるロボカップ世界大会を利用したプレゼンテーションおよびリーダシップ育成教育の実践について,サッカーロボットおよび人工知能の全体的な見直し,およびロボカップ国内および世界大会に参加しその性能をアピールすることで実施した。 特にH24年度,校外への出前授業を多く行い,ロボットの操作体験を通して,幼児・小中学生にものづくりのすばらしさや楽しさを学生自らの言葉で紹介できたことは,学生のリーダシップやコミュニケーション力を高める上で極めて高い効果があったと考える。また,世界大会で学生の英語プレゼンテーションを海外チームから褒めてもらえたことは学生自身とても自信になったようである。毎年であるが,海外チームとの交流は,英語力の必要性・重要性や英語苦手意識克服への有効性を学生に認識させる上で極めて効果が高いと実感している。 加えて,本校のロボカップの取り組みが他高専や他大学に知られるようになると,視察のための来校が増え,H24年度の参加チームの増加につながった。この波及効果は学生のプレゼンテーション力やアピール力の向上によるものとも言える。
|
今後の研究の推進方策 |
サッカーロボット開発という,学生の創造力育成課題の提示に対するその教育的効果は,十分に確認できている。H25年度も同様に進める予定である。ロボカップに参加する学生は毎年変わるため,先輩から後輩への技術やノウハウの伝承を確実に行うことと,立場を超え意見を出し合える環境は継続して提示したい。 英語運用能力の開発という点においても,効果が現れているので現状の取り組み姿勢を継続していく。 同様に出前授業については,H24年度,作製したロボットを用いた出前授業の回数は8件で,H23年度の3件の倍以上であった。H25年度も同程度の件数を確保したい。今後もコンピュータと人間との対戦型サッカー競技システムの開発などを行い,ロボットを通して学生が主体的となってコミュニケーションできる,対外的な機会を用意する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は,H25年度新規に開発予定のロボットの設計パーツの詳細が年度末までに決まらず,物品を発注できなかったためである。H25年度初めには購入すべき物品を決め,ロボカップ世界大会までには新型ロボットをなるべくたくさん投入する予定である。 具体的な研究費の使途は,物品費として高性能モータ,エンコーダ,ロボットの部材,電子回路部品,バッテリなどを予定している。また,大会への参加登録費,旅費,ロボットのメンテナンス,出前授業等に対する学生への謝金を予定している。
|