研究課題/領域番号 |
23501045
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研究機関 | 大阪府立大学工業高等専門学校 |
研究代表者 |
中谷 敬子 大阪府立大学工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60295714)
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キーワード | キャリア支援 / 内的キャリア / ワークライフバランス / 女性技術者 / キャリアチェンジ / 自己理解 / 就労意識 / 両立 |
研究概要 |
平成24 年度は、23年度の若年労働者の聞き取り調査を通じて、あぶりだされた、いくつかの事実について、継続的調査、ワークショップ等を通じた支援を実施した。研究遂行前は、メンタルヘルスの重要性は、若年層よりも中堅、および、それ以降の世代で大きいと考えていたが、実際は、若年層にも同様の問題が生じていることが分かった。これは、自身のアイデンティティの確立時期と、新しい環境での多忙な就労条件とが相まって、自身の内的キャリアを見失うことが混乱の原因の一つであった。さらに、23 年度に行った調査の対象を、若年層から、中堅層、および、それ以降の世代に移して、同様の聞き取り調査を行った。中堅層、および、それ以降の世代では、ワークライフバランスよりも、メンタルヘルスが、キャリア構築により大きな影響を与えることが示唆された。また、長いキャリア構築の中で、キャリアチェンジの機会も多くなるために、その際の本質的な心の動きと、実際の行動との相関、その間のギャップについて詳細に調査した。本研究は、女性技術者のキャリア構築に関する継続的な聞き取り調査により、キャリア構築の家庭での心的、行動学的な変化、キャリア構築の過程を研究し、支援の方法について実践し成果を確認したことは、近年問題となっている若年層の離職率に歯止めをかけるための対策にもその成果を活用することができる点で、意義がある。 また、ワークライフバランスに配慮した上での女性技術者のキャリア構築の過程を理解した上で、本研究で提案する方法論を適用した場を設計ことで、自律的にキャリアをとらえ、キャリア構築の多角的な面での準備をする場としてのワークショップ・プログラムを設計提案することが可能となり、心的なキャリアチェンジを支える枠組みを作ることは、専門的なスキルと実績を持った技術者の中途退職を防ぎ、個人的にも充実したキャリア構築を可能とする点で重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24 年度は、中堅層以降世代の女性技術者のキャリア構築過程の聞き取り調査と、若年層のキャリア意識の継続的な追跡調査を目的とした。この目的のために,男女の技術者を希望する20才の高専5年生,さらに、大学生、大学院生、および,複数の企業の女性技術者を対象としたキャリアを見つめるワークショップを複数回開催した.キャリアカウンセリングを通じた自己理解、自己発見が、いずれの世代においても、就労を肯定的にとらえることができるために重要な支援となることが分かった。それを学生、技術者同士が相互に意見交換していくなかで行えるような場の設計についても、複数回のワークショップのなかで、一定の知見を得た。自身が理解している自分が求めている目的と、本当に求めている・環境に適応した目的とがずれに起因する就労への意欲低下は、中堅層の場合、自分にできることを見つけることで、環境を自ら変える強さに替えていくことに気づかせる支援が有効であることが分かった。平成23年度に継続して、このような環境への働きかけについての支援は、研究着手前は考えていない方策であった。申請者からの支援だけでなく,「場」を提供することで,参加者同士で意見交換・情報収集等が行われ,期待以上に能動的な活動が支援できたことも大きな成果であった. 具体的な実施内容としては,企業で働いている女性技術者のキャリア支援のためのワークショップを6回実施.技術者を志望している20歳代学生対象にキャリア支援ワークショップを2回実施.さらに,講義の中で、半年間15回構成のキャリア開発ワークショップを開催し、若年層のアイデンティを見つめながらの内的キャリアを見つめる支援も実施し、発表会を開催した。これらの成果を学会にて,研究成果を2件発表し,情報交換を行った. 以上の様な理由から,当初の計画以上に進展していると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
平成25 年度は、2 年間で得た支援の方策を整理し、それぞれの世代、キャリアステージに応じたキャリア支援の場のプログラムについて提案、実施、効果を検証する。また、若年層支援として、「女子会」を創設し、構成する女子学生自らが自発的・能動的にキャリアを考えるための場の設計開発を行う。申請当初は、支援のデータベース化、キャリア構築過程の擬似体験が可能なソフトウェアを開発を計画に挙げていたが、対象者と共に「協働的に」作成する場の中での力動が、キャリア支援には必須であり、有効なものであることが、これまでの研究から明確になったので、プログラムではなく、場の設計とその場を支援するための組織に必要なものは何なのかを調査・研究し、組織と個人の共生のためには何が必要であり、女性技術者固有の困難・課題を調査、明確化することで、どのような支援をすることで共生が図れるのかを研究する。得られた成果は、学会発表、学術論文等に発表し、情報を共有する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25 年度は、23、24 年度に行った調査の対象を、若年層、中堅層、および、それ以降の世代の就労に関する継続的な聞き取り調査を行うと同時に、それぞれの世代とキャリアステージに応じた場、具体的には、ワークショップ、ロールモデルカフェ、キャリアカフェ等を積極的に開催し、これまでの研究で得た知見から設計した場の有効性について評価する。また、これまでの研究から、キャリアカウンセリングの技術が本研究遂行にあたり、必要なことが明らかになったので、キャリアカウンセリング研究に関する研究会、研究者との議論にも積極的に取り組む。研究費はこれらの研究会、ワークショップの開催や、研究会、学会への参加、および、成果発表に使用する予定である。
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