研究課題/領域番号 |
23501046
|
研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
三木 功次郎 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 教授 (80259910)
|
研究分担者 |
直江 一光 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 准教授 (00259912)
北村 誠 奈良工業高等専門学校, 一般教科, 准教授 (60341369)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 自己駆動型電量分析 / 電子伝達メディエータ / 酵母 / 酵素 / 化学教育 |
研究概要 |
1.自己駆動型電量分析装置の開発 測定セルは市販の樹脂製透析セル(負極・陽極共に約2.5 cm3)を一部加工して作製した。負極・陽極の電極には表面積が大きいカーボンフェルトを用いた。負極反応槽と正極反応槽の間の隔膜には市販の陽イオン交換膜を用いることとした。一定電位印加時のヘキサシアニド鉄(II)酸カリウムの酸化電流より電気量を求めて、測定精度・再現性などについて基礎的評価検討した。その結果、1.0 mM ヘキサシアニド鉄(II)酸カリウム水溶液を0.010 mL添加した場合の電解効率は約100 %となり、誤差は0.98 %になった。ただし、ヘキサシアニド鉄(II)酸カリウム水溶液の濃度を下げると、電解効率および再現性が低下した。電子伝達メディエータとなる2‐メチル-1,4‐ナフトキノン(ビタミンK3)を用いて、パン酵母添加時のビタミンK3の還元挙動およびその酸化電流応答の検討を行った。その結果、パン酵母を添加後、電解電流が増加し、グルコースやエタノールの添加でその電流値が増大することが分かった。また、清酒酵母によるグルコース酸化に伴う電流応答についても基礎的な検討を行った。自己駆動型電量分析と同じ原理で作動するバイオ電池に清酒酵母を用いると、パン酵母を用いるより得られる電流が増大することが分かった。 また、効率よく全電解するために、電極表面の金属ナノ粒子を用いた化学修飾に着目し、検討を行った。生物に対してイナートな金属である金に着目し、調製条件の検討を行うことにより、直径数ナノメーターの水溶性球状金ナノ粒子の調製に成功した。2.自己駆動型電量分析装置を用いた実験カリキュラム検討 自己駆動型電量分析装置を用いた実験カリキュラムに関して、高専レベルでのテキスト作成のために、電量分析、および酵素または微生物による代謝について実験実施方法の検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自己駆動型電量分析装置の製作過程において、電解効率および再現性の向上に時間がかかったため、平成24年3月時点では微生物によるグルコースやエタノールの自己駆動型電量分析法の確立まで達成できなかった。しかし、アンペロメトリーによる実験で、グルコースおよびエタノール添加に対して電子伝達メディエータの還元量が増大することが分かった。今後、この知見を基に自己駆動型電量分析法の確立を目指し、研究スケジュールを達成する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
自己駆動型電量分析装置については、電極、半透膜、測定セル等の検討を継続して実施し、さらに低コストで簡便に利用できる装置を目指す。金ナノ粒子を触媒とする電量分析法についても新たに検討する。また、本装置を用いた微生物活性のモニタリング(細胞活性測定)について検討を行う。微生物を含む培養液の一部をサンプルとして用い、微生物により還元された各種電子伝達メディエータの電極上での再酸化により、微生物活性に相当する電流応答(電気量)についてデータを得る。培養の炭素源となる多糖類・グルコースや電子伝達系阻害剤などを添加した場合などの電流応答の対応関係について検討を行う。また、BOD測定系の開発についても取り組む。これによって得られる情報は、微生物活性や代謝物質、環境汚染物質などに依存すると考えられる。そのため、様々な物質が生命に与える影響について直感的に理解できる教材となることが想定できる。また、BOD測定系の開発についても取り組む。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、自己駆動型電量分析装置の製作に必要な材料購入、電流測定に必要なデジタルボルトメータ・精密抵抗器、および実験器具、試薬、微生物などの購入に使用する。また、研究成果発表のための旅費に使用する。
|