研究課題/領域番号 |
23501050
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研究機関 | 神奈川県立生命の星・地球博物館 |
研究代表者 |
佐藤 武宏 神奈川県立生命の星・地球博物館, その他部局等, 主任学芸員 (30280796)
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研究分担者 |
田口 公則 神奈川県立生命の星・地球博物館, その他部局等, 主任学芸員 (70300960)
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キーワード | 教材開発 / 貝殻 / 学校教育 / 博物館 / 講座 |
研究概要 |
博物館の室内実習において、教員向け・生徒向けの講座を実施した。講座は(1)現生ホタテガイと化石ホタテガイを材料とした進化と個体群間の形態変異の理解、(2)アワビとトコブシを材料とした絶対成長と相対成長の理解、(3)アサリを材料とした個体群内形態変異の理解、(4)さまざまな巻貝を材料とした巻貝のかたちの法則性と多様性の理解、(3)ホタテガイとウバガイを材料とした、解剖による軟体部と殻の対応の理解、(6)化石生物であるアンモナイトと現生生物である巻貝類を材料としたかたちの比較と殻の機能形態の理解という授業2コマ程度に相当するモジュールで構成した。参加者に対して、理解度と満足度、この講座を受講しての進化、変異、成長、多様性などに対する理解度についてアンケート調査と聞き取り調査を実施した。この結果から、実物標本を用いた講座の有効性を確認した。 それぞれのモジュールに対して、中学校、高等学校、特別支援学校の理科教諭に協力してもらい、内容や難易度、教科書との関連性、教材としての使いやすさなどについて検討を行った。 材料となる貝類を、市場に流通する水産物から調達して、標本として利用できるようなかたちにするまでの一連の作業について検討をおこなった。実際に生徒、学生などにも経験してもらい、作業そのものが特別な技術や設備や器具を必要としないことを確認した。しかし、このような統計的な考察をともなう教育プログラムには、多数の標本が必要であるため、標本の調達をより容易なものにする必要があることを確認した。 このことを受けて、実際に野外(鹿児島県吹上浜)で同一種の標本を多数採集できるような材料を検討した。 東京都内の視覚特別支援学校(旧盲学校)でも教育プログラムを実施した。これら実物資料を用いた教育プログラムが、視覚障害を持つ生徒にとって進化、変異などを理解するのに絶大な効果があることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
貝殻標本を、標本販売業者や水産業者から調達することを予定して研究計画を策定し、申請した。しかし、研究の初年度の直前に発生した東日本大震災により、標本販売業者や水産業者の多くが被災し、標本の調達に遅滞が生じた。このため、平成23年度に研究の遅れが生じ、研究計画を若干見直す必要が生じた。平成25年度になっても、標本調達の遅れが研究の達成にわずかに影響を及ぼしている。そのため、標本調達の手段を、標本販売業者からの購入から、野外からの直接調達に切り替えざるを得なかった部分がある。 ただし、教育プログラムの開発や実施といった根幹部分については全体の計画に影響を及ぼさない程度で進行している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画書にしたがって研究を推進する予定である。 平成26年度は(1)貝殻を利用した教育プログラムの開発、修正、学校教育への応用の検討、(2)プログラムの出前講座による学校での実施、担当理科教諭へのレクチャー、(3)博物館での講座の開催と、講座参加者へのアンケート調査、聞き取り調査、およびこれに基づくフィードバック、(4)協力機関での講座の実施、(5)特別支援学校での講座の実施、(6)研究の取りまとめ、をおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、教育プログラムで使用する貝殻標本を、貝殻標本業者および水産業者から購入によって多数調達しようと考えていた。これが東日本大震災の影響もあって遅れたため、前年度以前からの繰越金が生じた。これに今年度の交付金を加えたものが、次年度の使用額となった。 教育プログラムで使用する貝殻標本の調達、購入水産物を教材として利用できるように加工するためのアルバイト人件費、出前講座などの旅費、研究の取りまとめに使用するその他の諸経費として使用する。
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