25年度までに講座や出前授業を実施した中学校、高等学校、特別支援学校の理科教諭からの、教材に関する内容や難易度、教科書との関連性、資料の使いやすさなどに関する聞き取りの結果を検討した。この検討結果を受けて講座のテキストや資料の利用方法などに改善を加え、ブラッシュアップした内容の講座を、博物館の室内実習において、教員向けと、中高生向けに実施した。講座は(1)現生ホタテガイと化石ホタテガイを材料とした進化と個体群間の形態変異の理解、(2)アワビとトコブシを材料とした絶対成長と相対成長の理解、(3)アサリを材料とした個体群内形態変異の理解、(4)さまざまな巻貝を材料とした巻貝のかたちの報告性と多様性の理解、(5)ホタテガイ、ウバガイ、スルメイカを材料とした解剖による軟体部と殻の機能および体制の理解、(6)化石生物であるアンモナイトと現生生物である巻貝を材料としたかたちの比較と殻の機能形態の理解という、それぞれ授業2コマ程度に相当し、(1)進化・変異(2)成長(3)個体変異(4)多様性(5)機能・体制(6)進化・機能形態に対応する内容とした。 材料となる貝類を市場に流通する水産物から調達して、標本として利用できるようなかたちに加工するまでの一連の作業を検討し、実際に生徒や学生にも経験してもらうことを通じて、授業の中で資料の調達、加工が可能であることを確認した。また、福岡県多々良川河口干潟、名島海岸、和歌山県白浜地域、すさみ地域、串本地域で標本を採集し、徒手で入手できる打ち上げ貝類の貝殻標本が学習プログラムを実施する際の資料として有効であることを確認した。 東京都内の視覚特別支援学校、北海道内の公立高等学校でテストケースとして教育プログラムを実施し、本研究によって開発した実物資料を用いた教育プログラムが、進化、変異、成長、多様性などを理解するのに大きな効果があることを確認した。
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