研究課題/領域番号 |
23501058
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
野原 佳代子 東京工業大学, 留学生センター, 教授 (90327312)
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研究分担者 |
中山 実 東京工業大学, 社会理工学研究科, 教授 (40221460)
仲矢 史雄 大阪教育大学, 科学教育センター, 准教授 (90401611)
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キーワード | 理科教育 |
研究概要 |
戦後の理科教育政策とその普及・受容についての多岐にわたる調査を行った。10月に研究代表者・分担者全員で沖縄調査旅行を実施し、大田平和総合研究所にて元沖縄県知事大田昌秀氏インタビューと、沖縄県立公文館・沖縄県立図書館において文献調査を行った。米軍とくに米海兵隊・海軍が中心となって沖縄に上陸し占領政策の土台を作った時期においてどのように教育政策が制定され、また市町村、あるいは民間レベルでどのように受容体制が整っていったかについて多くの資料が得られた。またインタビュー内容については分析が進行中である。 1月に元NHKアナウンサー 武井照子氏インタビュー・2月に日本文化研究者 ドナルド・キーン氏インタビュー・元NHK論説委員 縫田華子氏インタビューを行った。戦後、ラジオを中心とするメディアや教育現場等において米軍の推進する民主主義、実用主義的な指針やモラルがどのように伝えられ受容されていったかについて多くの知見が得られた。内容についてはデータマイニングや自然言語処理等を利用した分析を進めている。 GHQ関係者の編纂指導が行われた日本の理科教科書を、テキスト検索可能な高解像度のデジタルデータ化を行い、民主主義、平等主義の影響の分析も行った。特に、挿絵の中に登場する人物の役割、年齢、性別を分析し、以降、今日の教科書内の登場人物の構成と比較分析を行った。 「博物新編補遣」は、科学技術情報を一般向けに記した文献として貴重な一次史料であり科学コミュニケーションの歴史を記述する上で重要な役割を持つ。今年度はそのデジタル化を行ない、今後の言語分析等を可能にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画(戦後の理科教育改革の実態を調査し資料を保存する)に従って、順調に調査を進めており、得られた資料のとりまとめを進めている。具体的には、沖縄で調査収集した資料、インタビュー記録について分析を進めている。 分析の観点は、戦後の日本を統治したGHQが編纂指導した日本の理科教科書がアメリカの科学書にどの程度関連していたかを調査している。また、日本に導入された民主主義、実用主義的な教育の普及実態について、当時の文化人らにインタビュー調査を行った。 現在、分析を通して実際に教科書作成に参照された使用された科学書の内容を精査している。 最終年度には、収集資料の分析をさらにすすめ、WEBサイト等による一般公開を行っていく計画である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、これまでに調査収集した教科書などの分析を進め、戦後の教科書に 記載された内容の特徴を抽出する。このために、近年の教科書との比較などにより、当時のアメリカの科学観が日本の子供たちの科学リテラシーに与えた影響の差異を明確するとともに、その他の資料によって当時の教育観点を明らかにする。 さらに不足する情報については、当時の父兄や教員などに可能な範囲でインタビュー調査を実施し、彼らの実体験を明らかにした上で記録する。 当時の教科書編纂過程で、十分な保存管理がなされていない教科書案の原稿や翻訳冊子(英語版)が散逸しないよう、残された資料を確保し適切な記録・保存を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記方策の計画に基づき、次年度研究費は主に以下の調査において使用する予定である。 1.アメリカ合衆国,イリノイ大学への文献・資料調査およびインタビューのための旅費 2.収集したデータのテキスト書き出し・共有化。成果紹介パンフレット等冊子の作成 3.教科書、書籍デジタルデータ処理・書面構成要素データ化、整理補助 4.上記の情報の一般公開のためのデータベース・サイト構築用ハードウェア、ソフトウェア、サイト運営費
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