研究課題/領域番号 |
23501058
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
野原 佳代子 東京工業大学, 留学生センター, 教授 (90327312)
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研究分担者 |
中山 実 東京工業大学, 社会理工学研究科, 教授 (40221460)
仲矢 史雄 大阪教育大学, 科学教育センター, 准教授 (90401611)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 理科教育 / 占領統治下 / 『小学生の科学』 / 基礎科教育叢書 / 科学リテラシー / 翻訳理論 |
研究実績の概要 |
本研究は、第二次世界戦後の占領下の日本において編纂された理科教材とそれをめぐる状況を科学リテラシー教育の視点から調査し、日本文化に適した科学教育を模索することを目指す。科学リテラシー教育の思潮をたどる上で重要な資料の一つに、占領軍の指導のもとで昭和20年代に作られた理科教科書『小学生の科学』がある。これに大きな影響を与えたものに、パーカー著作『基礎科学教育叢書』とその原文があり、これらは広義の「翻訳関係」にある。これらの資料を材料に、科学的能力を育む新しい戦後教育の試みが翻訳行為をツールにどう積み上げられていったのかを多角的に研究した。
最終年度として、研究成果のまとめとアウトプットの準備と実施につとめた。 ①研究資源としての『小学生の科学』『基礎科学教育叢書』等のデジタルデータ、インタビュー成果等の一般公開に向けたコンテンツ作成とWEBサイト準備②教科書の挿絵の特徴から読み取れる教材制作意図の分析③翻訳理論を利用した教科書の英語原文と日本語版の対照による言語学的特徴分析と、科学リテラシー教育の観点から見た評価④関連学会調査(仏)、図書館(国内)における文献調査⑤教科書で扱われる単元項目の年代ごとの系統と変遷の整理⑥教科書の文体やキャラクターによるコミュニケーションの変遷の観察 これらを通じ、学術的文献とも現代の教科書とも異なる科学読み物ならではの特異なテクストタイプの実態の一部が記述され主体的・批判的思考滋養との関連性が示唆されるに至った。日本語ならではの表現特性を活かした科学読み物と、そこから触発される刺激や思考が、日本文化に根差した科学の展開とも連動している可能性がある。課題としてはさらなる英語原文の特定と、教科書の現場での使用実態調査、また占領政策から受けた制約を明らかにするために戦前から受け継がれた教科書の形式や指導環境との関係調査等が挙げられる。
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