研究課題/領域番号 |
23501065
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
尾關 徹 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (70152494)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 科学教育 / 環境分析 / 国際協力 / 大気汚染 / 有害化学物質 |
研究概要 |
本研究では,大気中に暴露した銅板の腐食量を簡易計測するシステムを考案し,銅板腐食に影響する大気汚染物質を調査することにより,国内外の学校教育の場で利用できる環境教育実験教材を開発することを目的としている。本研究では,A:銅板を用いた腐食実験,B:水晶振動子マイクロバランス法を用いた実験,及び,C: 大気の汚染状態を知るための降水の化学分析,の3つを並行して行う。平成23年度においては,4隅に穴を開けた純度が既知で清浄な表面を持つ銅板(7cm x 7cm 厚さ 0.5mm)を準備し,日本国内2箇所(兵庫教育大学,福井大学),韓国3箇所(京仁教育大学校(仁川市),大邱教育大学校(大邱市),新羅大学校(釜山市)),台湾1箇所(屏東教育大学校(屏東市))に送った。暴露実験は,兵庫・福井・大邱・屏東では2011年9月 6日から,仁川・釜山では10月4 日から開始した。平成24年の3月20日に第7回目の暴露実験を終えた。現在,暴露された銅板試料は兵庫教育大学に送られ,腐食量を測定する段階にある。さらに,銅板を暴露している場所の大気汚染の状況を知るために,銅板設置場所で,1週間毎の降水試料を採取してもらい, pHと主要イオンの化学分析を兵庫教育大学で行っている。一方,兵庫教育大学で,8月にオゾン測定装置を購入し,大気中のオゾン濃度の継続測定を行っている。また,超音波洗浄器と送風ポンプからなる人工気象システムを製作し,空気環境(成分,湿度,気温)が,銅板の腐食に与える影響を実験室的に調べた。水晶振動子マイクロバランス法を用いた実験では,水晶振動子を固定するマスセンサーホルダーの改良を行った。現在,腐食を生じない参照用マスセンサーの導入を計画している。分析の終わった降水試料中の汚染物質の季節変化や,銅板の腐食実験の結果を複数の学会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
兵庫教育大学で銅板を準備し,洗浄後,日本国内2箇所(兵庫教育大学,福井大学),韓国3箇所(京仁教育大学校(仁川市),大邱教育大学校(大邱市),新羅大学校(釜山市)),台湾1箇所(屏東教育大学校(屏東市))に送り,暴露実験を,兵庫・福井・大邱・屏東では2011年9月 6日から,仁川・釜山では10月4 日から開始した。韓国の大学の夏季休業期間等の影響により,当初予定の8月開始が,1か月遅れたが,平成24年の3月20日に第7回目の暴露実験を終え,おおむね順調に進展しているといえる。また,兵庫教育大学で,8月にオゾン測定装置を購入し,その後,大気中のオゾン濃度の継続測定を行っている。降水試料の分析は順調に進んでおり,その結果を学会で発表した。超音波洗浄器と送風ポンプからなる人工気象システムを用いた実験は,当初の目的をおおよそ終えたと考えている。水晶振動子マイクロバランス法を用いた実験では,平成23年度に行った予備実験から,銅をメッキした銅表面マスセンサーに加えて,腐食を生じない金表面のマスセンサーを参照用に導入した方が良いことが分かった。これらの事から,本研究の平成23年度の研究は,予定通り,おおむね順調に進展しているということができる。
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今後の研究の推進方策 |
銅板の4週間毎の暴露実験は,全体で2年間(26回)行う予定であり,平成24年度は,平成24年3月20日から4月17日を第1回目として,平成25年2月19日から3月19日の測定まで,計13回行う。平成24年度9月末には,1年を通した銅板腐食状態の季節変化と,オゾン濃度の季節変化のデータが得られる。兵庫教育大学での腐食量の定量測定とオゾン濃度のデータ,降水の化学分析のデータなどを関連させた解析をできるだけ早く行い,実測データを用いて,韓国と台湾の附属小学校等などでの大気環境に関する授業を行う予定である。また,銅をメッキした銅表面マスセンサーに加えて,腐食を生じない金表面のマスセンサーを参照用に導入した水晶振動子マイクロバランス法のシステムを完成させ,平成24年度中に大気環境中での実験を開始する。これまでの銅板を4週間暴露する実験では,実際の腐食反応が,一日の内のいつ生じるかが分からなかったが,水晶振動子マイクロバランス法のシステムを用いると,秒単位での腐食過程の追跡が可能となる。この方法により,銅板の腐食が生じるより詳細な要因について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度第7回目の銅板の暴露実験を平成24年の3月末(3月20日)に終えた。その確認作業の後に,韓国3箇所(京仁教育大学校(仁川市),大邱教育大学校(大邱市),新羅大学校(釜山市)),台湾1箇所(屏東教育大学校(屏東市))の協力者に対する謝金の支払いを行ったので,実際の送金が,平成24年の4月末になってしまった。また,水晶振動子マイクロバランス法を用いた実験では,平成23年度に行った予備実験から,銅をメッキした銅表面マスセンサーに加えて,腐食を生じない金表面のマスセンサーを参照用に導入した方が良いことが分かったが,この参照用マスセンサーの規格の選定が平成24年度になってしまった。これらのために,「収支状況報告書」に,次年度使用する予定の研究費ができてしまった。その他の研究費の使用については,当初の計画の通り,研究の継続に必要な物品購入,謝金の支払いなどに用いる。
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