研究課題/領域番号 |
23501071
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
八ツ橋 寛子 宮崎大学, 教育文化学部, 准教授 (60182359)
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キーワード | 種子 / 光発芽性 / フィトクロム / 野生植物 / 生物教育 |
研究概要 |
24年度は,身近な環境から光発芽性の野生植物種子を見出し,昨年に引き続き光によって発芽の促進される種子を見出し,その中でもフィトクロム低光量反応の典型である短時間の赤色光‐遠赤色光照射による可逆反応を示すものをピックアップすることを目的とした。数種の植物を試行した結果,ニワゼキショウとツボミオオバコの種子が25℃と15℃の白色光下ではよく発芽し,暗黒中では発芽しないことが分かった。この中で,発芽率のよいツボミオオバコについてさらに実験を行ったところ,赤色光1分間の短時間照射でも発芽促進効果があった。種子の赤色光に対する感受性は吸水開始後徐々に高まり4日後に最高になったが,3~6日後の期間は有意であった。さらに,赤色光1分に引き続いて3分の遠赤色光を照射したところ,赤色光効果の可逆的な打消しがみられた。このような可逆反応は25℃で顕著であったが,15℃でも有意であった。これらのことから,ツボミオオバコの種子発芽にはフィトクロムの低光量反応が関与しており,教材として使用可能であるといえる。さらに,種子の光感受性は吸水開始3日後から1週間程度維持されるため,異なる曜日に多クラスの授業を行う場合でも,教師が予めまとめて播種することが可能である。また,温度依存性が低いため,室温での実験が可能と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
24年度は,1種の教材化可能な種(しゅ)を見出すことができた。この種は,都市部に多くみられる外来種であり,フィトクロム関与の光反応を示す温度依存性が小さく,かつ吸水から実験までの期間が数日取れるなど優れた点がみられた。しかし,教材化する種子の入手の点から,季節性も考え,さらに多くの種子を調べる必要がある。種子は,種(しゅ)ごとに休眠性や光感受性をもつ期間が異なり,これらの検討に想定よりやや時間がかかっている。 予定していた波長の混合照射については,LEDの特性から場所による波長のむらが完全にはなくならず,混合照射は難しい状況である。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は,最終年度であるが,これまでに教材化の可能性が見いだされた種子が1種であることから,さらに多くの種について検討し,条件に合った種子の教材化を前半の目標とする。その後,それぞれについて実験方法の確立を目指す。 現在候補として,ツボミオオバコと近縁であるが在来種のオオバコ,晩秋の花の少ない時期に開花するツワブキ,小さな種子をつくり光発芽性が期待できるスズメノヤリなどが考えられている。 赤色光/遠赤色光の混合照射については,種子が微小なため,わずかな光強度のむらも大きな影響を与える可能性があり,拡散性の乏しいLEDを用いた照射では事実上難しいことが分かったので,まず赤色光と遠赤色光の単色光照射を重点的に行うこととする。また,自然光(直射光と葉の透過光)を用いた実験が可能か試みる。自然光を用いることができれば,特別な照射装置を必要としないため,学校での実験が容易になるほか,自然界における光発芽性の意義について考察が容易になる。また,温度依存性および吸水開始から光感受性獲得までの時間とその持続時間を調べる。これらの結果から,教育現場で実用可能な実験プロトコルの作成を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は,実験の進捗状況から,インキュベータ 390,000円)および青色LED装置(140,000円)等の購入を見送ったため,約730,000円を25年度に繰り越し,25年度予算100,000円を合わせ830,000円が使用可能である。25年度は老朽化したインキュベータ2台を更新するほか,消耗品に50,000円を使用予定である。
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