研究課題/領域番号 |
23501071
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
八ツ橋 寛子 宮崎大学, 教育文化学部, 准教授 (60182359)
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キーワード | 種子発芽 / 光発芽性 / フィトクロム / 野生植物 / オオバコ / 生物教育 / 高校生物 |
研究概要 |
昨年度は,ツボミオオバコが教材化の可能性のあることを明らかにしたが,平成25年度は,さらに種類を広げ,実験条件を確立することを目的とした。宮崎大学構内で採取可能なオオバコ,スズメノヤリ,スミレ,シマスズメノヒエ,タチスズメノヒエ,キンゴジカについて休眠性を調べ,教材化の適否を判断した。このうち,オオバコとスズメノヤリで光による発芽促進がみられたが,スズメノヤリは発芽に時間がかかり,実験教材としての利用は難しかった。また,他の植物種子は実験条件で発芽しなかった。オオバコについてさらに調べたところ,15℃では明条件でも発芽率10%以下であり,25℃付近が実験に適することがわかった。光感受性は吸水時間直後から得られ,24時間後まで高い状態を維持して,その後徐々に低下した。発芽率は,25℃明条件では播種後5日でほぼ100%に達し,1週間の授業サイクルに適していた。フィトクロムの関与を示す赤色光/遠赤色光可逆性は明らかにみられた(赤色光で約80%,赤色光-遠赤色光で約25%)。 赤色光や遠赤色光の単色光を教育現場で得ることは難しいと考えられるため,照射方法についても検討した。照射光として野外の自然光を用い,赤色光が多い直射光と緑葉の透過光(遠赤色光に富む)で赤色光/遠赤色光と同様の可逆反応がみられるか,簡易な照射箱を作製して実験したところ,直射光(約2000Lx)でおよそ70%,直射光-緑葉透過光でおよそ30%と可逆性が確認できた。緑葉はツワブキのものを用いた。 以上より,オオバコ種子を材料とし,自然光を用いた実験が可能であることがわかった。自然光による実験は,他の植物の葉陰では光合成ができないため発芽を避けるという種子光発芽の生態的な意義を説明するのにも特に有効であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初25年度までの3年間で実験法の確立と公表を予定していたが,以下の理由により1年間研究期間を延長することとした。まず採集した種子の休眠が予想以上に深く,実験に用いることができるようになるまで数週間から数か月の後熟期間が必要であった。また研究の過程で,材料とする種を探すだけでなく,その種にあった実験方法を検討する必要性を感じ,時間をかけて実験を進めることとした。さらに,期間中に種子を保存していた冷凍庫が故障するという事故があり,一部の種子を再度採集しなければならなくなった。これらにより,さらに1年をかけて成果を上げることとした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに教材化の可能性のある種を2種見出したが,引き続き他の種について検討し,数を増やすことをめざすとともに,教育現場で可能な実験プロトコルを作成する。これには,種子の種類,採取時期,休眠している場合は解除法,実験温度,播種のしかた,照射法(光源を含む)が含まれる。特に自然光を使用した実験をマニュアル化する。検討しなければならない事項として,照射装置,必要な光の強さ,緑葉の種類などがある。照射装置については,今年度作成した照射箱の問題点を検討し,改良する。また,これらの結果を公表と教育現場での試行を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
「現在までの達成状況」で述べたように,種子の休眠によって一部の実験に遅れが出たため,消耗品の一部を26年度に購入することとした。また,種子の保存に必須な超冷凍庫が故障してこの更新を優先し,予定していたインキュベータの更新を見送ったため,差額が生じた。なお,インキュベータは当面,既存機器で対応することとした。 未使用額の主な使途は,実験期間の延長に伴い必要となる純水製造関係消耗品と培養器具,および照射装置作製費とする。
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