研究課題/領域番号 |
23501072
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
吉冨 賢太郎 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 講師 (10305609)
|
研究分担者 |
川添 充 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 教授 (10295735)
|
キーワード | 国際情報交換 / 東アジア / ヨーロッパ / アメリカ |
研究概要 |
研究の目的は, Web数学学習システムのユーザーインターフェイス, コンテンツ(教材)の構造分析, CAS 依存性の分析と教材の汎用化, 教材の多目的利用がその主な趣旨である. この目的のために, 問題入力システムの改良や学生の解答入力の改良, 数式出力の改良などを年次目標として上げていた. 当該年度においては, 初年度に引き続き, 本学のシステムであるMathOnWeb をベースとした数学力評価システムの開発・改良において, 問題入力システムの大幅な改良を行なった. この改良は, CAS依存文法以外にも必要であったさまざまな知識や開発技法の適用範囲を縮小し, CAS(Mathematica)の構文として動作するものを作製してシステムに投入することによりほぼ動作可能とすることができる. また, Javascript による LaTeX 記法を可能にする MathJax が webMathematica と混在可能であることを検証し, 問題文の表記法について, LaTeX 形式を汎用的に用いることができるように仕様を追加した. これにより複雑な手法を用いることなく問題文への数式表記が行うことが可能となっている. さらに, Javascript によるキー入力支援(Keypad)を上記システムに導入し, 解答入力における学生の心理的負担を軽減している. これらはMathOnWebでも利用可能である. また, 問題データの汎用化とそのデータベースの作製については, 現在比較的広く用いられていると考えられるSTACKと本学システムの問題データの構造の分析を行い, 一般的なデータ構造を整理することができた. また, この分析に基づき, 多目的利用についても, TeX内での計算処理などに用いるマクロの完成度を向上させ同目的に利用するための準備を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ユーザが入力しやすいようにするためのマウス操作による入力については, キーパッド入力によりほぼ完了したと言えるが, タッチ操作などタブレット操作による方法については, アプリの作製を検討しているものの, 技術的な力量の不足により現在そこまで至っていない. また, iPad などでWebブラウザ上で動作させたときに専用キーパッドを導入する必要があるが, この作製もアプリにより実現を検討しているため進んでいない. 教員の問題作成支援に関しては, モジュールとパラメータの組み合わせと文言の修正だけで問題を作成できる, というのが研究目的での目標であるが, ここまで単純化するには至っておらず, 未だCASの文法に関する知見が必要とされる状況である. しかし, MathOnWebに関しては相当程度に単純化できており, 深い知識がなくても複製して修正する等の方法で作成できる状況になっている. また, 有料のCASや CAS自体が利用できないような組織や利用環境においても, システムを利用できることを目標としているが, 現段階では有料のMathematica および無料のMaxima を用いた両システムでの共通利用の目処が理論上たった段階である. 最後に, 「TeX/PDF の問題として出力する」および「Webアプレットとして活用する」という目的に関しては, TeX での利用への準備はほぼできていると言える. しかし, タブレット端末などでの利用を想定したHTML5によるアプリ化などはまだ未着手なのが実情である.
|
今後の研究の推進方策 |
達成度に述べたように,研究目的の中で, 簡易な教材作成については実装上の困難性があったため遅れている部分が多い. 教材作成を大きく推進させるために, 教材データベースを作成し, 国内・国外での教育期間での教材共有を目指している. 教材のデータ構造の分析によって, TeX などを含めた多くのICT利用教材・eラーニングシステム等において, 共通する問題データを共有し, システム固有のものは, そのシステムに知見のある教員によって教材を作成し共有して行くというものである.各システムのコードを汎用的なテンプレートを用いて一般教員が簡易に作成可能にすることも重要だが, 一方でそのようなコードを広く共有し, 多くの利用者によって各システムのためのコードを充実させることがより普及に供すると考えられる. このような状況から, 今後の研究の推進方策として, (1) 教材データベースの仕様策定を進め, サーバ運用を試験的に開始する. (2) STACKの開発研究者らと協調し, また, Maple教材(Maplet)についても検証し, 仕様の詳細を調整する. (3) 構想を広く周知し, 教材作成のシェアを提案して行く. (4) iOS のアプリを用いたWeb数学学習システムの利用環境改善を行う. (1) のために, さらにデータベースや記述言語に関する知見を広め, 実装を行っていく. (2) のために, JSiSE等の学会で意見交換し, 研究を進めていく. (3) のために, 国内外のCAS利用の数学教育関連の学会に出席し, 意見交換してデータベースの構想の周知と進展を計る. (4) のために, iOSアプリの作成準備を進めていく. 以上のように, 教材共有のためのコンテンツデータベース作成を主眼とし, 今後は研究を推進させていく.
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が発生した理由については, MathOnWeb問題データ入力におけるバグ修正などで院生を利用する予定であったが, 解決済みのため, 余剰となったことが理由にあげられる. また, 海外出張の調整額が学内規定により発生したため, この分も余剰となった. 次年度の研究費使用計画として, 「今後の研究の推進方策」に記したように, データベース仕様の確定とサーバの実運用・普及のための周知・意見交換のために予算を使用する. 具体的には, サーバの運用のために必要な書籍の購入や情報収集のための学会・ワークショップ等の出席を行う. また, サーバ仕様の意見交換のため, JSiSE や日数教を含む国内学会に出席する. また, 学外の学会にも出席して, 意見交流・情報収集・周知などを行って行きたい. 国内外での主な学会として, JSISE, ICTCM, ACA2013 などを予定している. これらの学会への参加旅費として研究費を使用する予定である. また, UI改善のためのアプリ開発に必要なタブレット端末を購入する予定である. アプリ開発に必要なソフトウェアや書籍等は進捗状況に応じて必要に応じて購入する予定である.また, 開発に関する知識提供などを目的とするセミナーやワークショップへの参加も検討しており, それらの旅費に充当する予定である.
|