研究課題/領域番号 |
23501080
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研究機関 | 神戸常盤大学 |
研究代表者 |
大森 雅人 神戸常盤大学, 教育学部, 教授 (00194308)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 科学教育 / 幼児教育 / 保育者養成 / 教育方法 / 学習環境 / ICT |
研究実績の概要 |
前年度に開発した学習環境を活用した試験的な授業実践を実施して、その教育効果に関する検討を行った。 授業は、自然事象に対する興味・関心の育成、科学的思考ができる力の育成、子どもの科学的思考を育成するための環境設定と援助ができる力の育成の順に、3つのステップを設定した。第1ステップでは、「自然事象に対する興味・関心」を、自然とかかわる活動中に気付いた内容を可視化させるという学習を通じて育成した。第2ステップでは、「科学的思考ができる力」を、科学的思考を使うように意図した活動(試行錯誤するような活動)における思考過程を可視化させる学習と、身近な自然を対象に自分たちの探究活動を立案する学習を通じて育成した。第3ステップでは、「子どもの科学的思考を育成するための環境設定と援助ができる力」を、科学するこころの育成を目指した実践事例を参考にしながら、共同で子どもの活動を創造する学習を通じて育成した。 その結果、最終的には、子どもたちにとって身近と考えられる事物事象を用いて、幼児教育の現場で使用可能な材料や道具の範囲で、子どもたちが自らの力で科学的思考を使って何らかの規則性や法則性を見いだすことができると予想される活動を創造することができた。よって、開発した学習環境や教育方法は一定の成果があることを示唆する結果を得られた。 しかしながら、この学習の過程で、学生たちがつまずきを見せた場面もあった。それは、身近な自然を対象に、自分たちの探究活動を立案する場面であった。探究課題を立案することの困難さは先行研究においても指摘されていたが、今回の学習においてもそれが見られた。つまずきの内容を検討した結果、活動を立案するための視点をあらかじめ育成する必要があることが分かった。この点に配慮した教育方法を実践することにより、より効果が高くなることが期待できると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に開発した学習環境を活用して、幼児期に求められる科学教育が実践できる保育者養成のための試験的な授業実践を実施して、その教育効果に関する検討を行った。その結果、学習の過程で学生がつまずきを見せた場面があり、さらなる改善が必要と判断した。そのため、研究期間の1年延長を行った。 保育現場における科学的思考関連の実践内容の調査に関して、すでに公表されている実践報告の収集・整理・分析を中心とした文献調査の実施と結果の授業へのフィードバックを行ったが、量的に十分ではないので、さらなる調査が必要である。 以上の理由により、「やや遅れている」と評価した。 なお、次年度はこの研究の最終年度であり、計画通りに研究をすすめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、研究の最終年度として、以下の通り実施する。 今年度に試験的に実施した実践において見られた学生のつまずきに関して、その部分を改善する実践を計画して実施し教育効果を検討する。具体的には、次の通りである。 つまずきは、科学的思考を活用して自らの探究活動を立案するのに必要となる視点が欠如していたことに起因する。その視点とは次の4つ、すなわち、①探究で対象とする事象・事物は何か?②探究の課題は明確で、実際に活動可能か?③探究に必要な素材は何であり、準備可能か?④探究に必要な時間を考慮しており、設定時間内で活動を終えることが可能か?である。そこで、これらを育成するために、①探究活動の立案に必要な視点について、その内容と必要性を座学を通じて理解させる②幼児期の子どもたちが実践した探究活動の事例を題材として、その内容を分析する演習を通じて、視点を定着させる③視点を明示的に示して、探究活動の立案を行う(その際は、実践事例を参考資料として積極的に活用する)、といった授業内容を新たに導入する。 あわせて、実践事例に関する調査も実施して、授業にフィードバックできる体制を整える。 最終的に、5年間の研究の成果を取りまとめて、「幼児期に求められる科学教育が実践できる保育者養成教育」のあり方に関して提案を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、平成25年度~26年度にかけて2回実施する予定であった授業実践が、研究代表者の所属変更による環境の変化により開始が1年遅れた。そのため平成26年度末現在で、1回目の実践を終えた段階だが、結果は不十分であり、現時点で課題が明らかになっている。 そこで、研究期間を1年延長して、課題を踏まえて改善した内容で授業実践を行った上で研究成果をまとめることとしたため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
授業実践にあたっての課題を検討するための資料収集、授業実践結果の解析、成果の発表に充てる。
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