昨年度開発した簡便型解析ソフトについて検証し,観測地点の選択方法や表示グラフ等に改良を加えた最終版解析ソフトを作成した.このソフトでも,気象庁のデータを使用し,対象観測地点は都道府県庁所在地などの60地点である.気温データとしては,①毎時の気温,②日ごとの平均気温,③月ごとの平均気温,④年ごとの平均気温の4種を持ち,観測地点に関しては,各地の⑤緯度,⑥経度,⑦標高のデータを持つ.作成できるグラフは①指定した単数または複数の観測地点での,指定した期間における,気温あるいは平均気温の推移を表す折れ線グラフ,②指定した複数の観測地点を対象とした,指定した時点における,観測地点の緯度と気温,あるいは緯度と平均気温との関係を表す散布図である. このソフトから作成されるグラフの教材としての有用性を検証した結果,これらのグラフを用いると,気温データの中に,①直線相関,②曲線相関,③傾向,④循環の4種の基本的パターンを視覚によって直感的に,かつ簡単に見出せることが確認された.また,得られた複数のパターンを比較することによって,それらの間に成立する高次のパターンが見出せることも確認された.さらに,測定されたままのデータを見ていては分からないが,複数の観測値の平均を用いるとパターンが浮かび上がる場合があることも体験できることが確認された. 一方,グラフから見つけられるパターンをもとに指導書を作成した.この作成の過程で,パターン間の関係,即ち一つのパターンを見出すと,それが切欠となって他のパターンが導出される関係,換言すればパターン発見の連鎖過程を視覚化して表現すれば,指導に便利であるとの着想を得た.ただし,これの踏み込んだ研究は期間内では行えず,今後に委ねることとした. なお,本研究で開発した簡便型解析ソフトについて,それを説明したホームページを開設して内容を公開した.
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