研究課題/領域番号 |
23501092
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
三石 大 東北大学, 教育情報基盤センター, 准教授 (50305306)
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研究分担者 |
大河 雄一 東北大学, 大学院教育情報学研究部, 助教 (60361177)
今野 文子 東北大学, 高等教育開発推進センター, 助教 (20612013)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 成長型教授設計プロセスモデル / ダブルループ教授設計プロセスモデル / 対話型授業 / 対話型教授システム / 授業改善 / 授業リフレクション / クラウドコンピューティング / クラウド型教育環境 |
研究概要 |
本研究では、成長型教授設計プロセスモデルであるダブルループ教授設計プロセスモデルに基づき、授業計画と教材データをオンライン上に保存、蓄積、提供し、これによる対話的授業の実施を可能とするとともに、実施した授業内容もオンライン上に記録、保存し、教師と学生の双方が自由に閲覧、利用可能とすることで、授業計画と教材データの効果的な再利用を促進し、授業内容の更なる改善、高度化を可能とするクラウド型教育環境の実現を目指している。 そこで初年度であるH23年度は、本研究で提案するクラウド型教育環境の基盤としての情報システムの実現に向け、その要求仕様を明らかにすべく、先ず、黒板を利用した通常の対面授業、ならびに我々がこれまで開発を行ってきた対話型教授システムIMPRESSIONを利用した授業の実施内容を記録、観察し、授業改善、高度化のために着目すべきポイントを確認可能なポイントの定義、ならびにこれらを確認可能なクライアントシステムの試作を行った。これにより本研究で目指すクラウ型教育環境における成長型教授設計の実現に向け、授業リフレクションの実施とこれによる授業計画の改変に必要な情報を得るための基本的な手法の基礎を明らかにした。 またその上で、具体的な授業実施結果に基づく授業改善、高度化に必要となる授業計画、教材データ、および実施結果それぞれの再利用のために、教材データと授業計画の管理方式、ならびに実施した授業の教示内容を伝達、記録するための通信方式の検討を行った。これにより本研究で実現しようとする情報システムの構築に向けた基本方針の基礎的事項を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度、当初の予定では、本研究で構築する教育環境のための基盤システムのプロトタイプシステムの試作を行いながら、その基本設計を明らかにする計画であったが、現在、その途中段階となっている。 この遅れの最大の原因は、昨年度末の東日本大震災にある。東日本大震災では本学も大きく被災し、研究代表者が所属する教育情報基盤センターが管理する教育用計算機群も全倒し、その復旧作業に多くの時間を要した等、年度当初に学内の教育・研究環境の復旧に相当の時間を要し、これにより本研究の開始も遅れてしまうこととなった。 また、これにより生じた遅れを取り戻すべく、その後は精力的に研究を進めたが、震災の影響で学年歴全体もタイトなスケジュールとなっていた中、本研究で開発するデータの記録方式の設計に時間を要し、クライアントおよびサーバシステムの開発に時間がかかってしまっている。 ただし、授業の実施結果に基づく授業計画立案に必要となる授業のふり返り支援手法やそのための支援システムの開発が進むなど、当初の計画以上に進展している部分もある。
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今後の研究の推進方策 |
先ず、H24年度において、初年度に引き教材データと授業計画の管理方式、ならびに実施した授業の教示内容を伝達、記録するための通信方式の検討を行い、これに基づき、再利用可能な形式による授業計画と教材データの管理のためのデータ構造とその操作方法、ならびにクラウド上で授業を実施するためのクライアント・サーバ間の通信プロトコルを検討し、システムアーキテクチャの詳細設計を明らかにする。その際、実稼働可能なプロトタイプシステムの試作を迅速に進め、これにより詳細設計の明確化とシステムの実装を並行して実施することで、初年度の遅れからの回復に努める。 また、以上の詳細設計に基づき、実証実験に適用可能な実験システムの実装を行い、その試行実験を行うとともに実教育現場にも部分的に適用し、その実行結果、および利用形態を観察し、不具合の確認、ならびに実運用に向けた課題や要求の分析を行い、仕様を再定義する。 その上で、H25年度以降は、当初の計画に基づき、H25年度に、本研究で実現しようとするクラウド型教育環境として継続的な運用、ならびに複数利用者による複数授業科目での同時利用に適用可能な実証実験環境を構築、整備し、これによる実証実験を開始し、提案システムの実授業への適用可能性を明らかにする。 また、H26年度には、H25年度に構築する実験環境を利用した継続的な実証実験を実施し、本研究で提案するクラウド型教育環境の有効性を評価するとともに、この中で確認された課題に基づき、システムの改修を行い、クラウド型教育環境における授業計画管理のためのデータ形式と教示内容の記録、配信のための通信プロトコル、ならびにクラウド型教育環境の基盤としてのシステムのアーキテクチャの詳細を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
提案システムの詳細設計に向けて関連研究の調査を進め(調査研究旅費)、データ構造、通信プロトコル等の詳細を明らかにし、これに基づきクライアントシステムおよびサーバシステムそれぞれのプロトタイプシステムの実装を行う(システム開発補助、Linuxサーバシステム一式)。 また、実装したシステムによる実環境での試行実験を実施するとともに(実験補助、データ記録用メディア等)、これらの成果を学会等で報告する(成果発表旅費、印刷費)。
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