研究課題/領域番号 |
23501101
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
大森 康正 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (80233279)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 教授学習支援システム / デジタルテキスト / 知識情報処理 |
研究概要 |
本研究は,コミュニケーションを重視した学び合いを行う学習形態に対応した知的学習支援環境に関する研究である。開発する知的学習支援環境の特徴は,教師から生徒へ教授を行なう学習と「学び合い」を積極的に融合させることを目的としたデジタル教科書管理機能,学習者自身の学習履歴となるポートフォリオ機能およびルーブリック評価支援機能,知識ベースを活用した指導計画や指導案等の知的管理機能などを教育クラウド上で構築し,学び合いなどの学習活動を対象とした知的な支援を行なうものである。そのため,本年度は以下の研究を行った。(1)知識ベース構築に必要不可欠な対象モデルのモデリングのための基礎資料収集を,研究協力校の教員及び学会などで行った。その結果,年間指導計画,題材,指導案などに基づく体系的なモデリングの基本的な枠組みを構築した。(2)モデリングの基本的枠組みに対応した対象モデルに基いた知識処理システム構築環境の開発を行なっている。開発しているシステムは,モバイル環境でも利用可能であることを目指し,タブレットPCで最適化されている。(3)知的学習支援環境として,対象モデルの概念に基づいた学習リソース検索システムの開発を行い,上記のモデルの妥当性及び推論アルゴリズムの検証を行った。その結果,モデルを用いて検索者の意図を理解することで,検索結果の精度を高めることが確認された。(4)知的学習支援環境の一部として,オーサリング機能を持ったデジタルテキストシステム,協働学習を支援するSNS的な機能をもったWeb付箋システムなどの基本設計と一部試作を行った。また,利用環境であるタブレットPCの教育利用の可能性について大学院生に継続的に授業等で利用することで可能性の評価を行なっている。これらの研究の成果に基づき,平成24年度から行なう研究協力校(市立中学校)での評価実験が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標としている成果は,次の(1)~(4)の点について,定性的,定量的な手法を用いて評価を行い,各システムの有効性及びそれを用いた教育方法を開発し,中学校で実践するために必要な指導案等を策定することにある。(1)小・中学校における教育活動の対象モデルによるモデル構築,(2)小・中学校の教師でも利用可能な事例ベース推論等の知識処理システム構築環境の開発,(3)知的学習支援環境の開発,(4)開発したシステムの定性的・定量的な評価本研究は3年計画の1年目に該当する。1年目の目標は,各項目の基本設計を行い,一部試作システムを構築することである。その内容は学会での口頭発表などを重ね成果を開示した。具体的には,対象モデルによるモデル構築を学教教育における授業の設計書といえる指導計画,題材,指導案に基いた体系的なモデルで構築することで,多様な解釈が可能なモデルの構築が可能となった。その概念を用いた学習リソース検索システムを試作し,評価を行った結果,検索意図を理解することでキーワード検索より精度のよい結果が得られることを確認した。さらに,各種学習支援システムなどの基本設計を行い,2年目に行なう研究協力校での評価実験を行なうことが可能となったことから,おおむね順調に進展していると評価した。よって,研究実績の概要に示す内容について,おおむね達成されていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は,これまでの研究がおおむね順調に達成されたことから,1年目の研究成果に基づき,以下の通り研究を行なう。(1)知識処理システム構築環境の改善を引き続き行う。特に,2年目では実際の教育現場での活用を考慮し不完全な情報でも知識処理が可能なモデリングと知識処理の方法の検討を中心に行なう。(2)デジタルテキスト,協働学習支援機能,評価支援機能などの各種機能およびモジュール構築を引き続き行うと共に,予備実験の結果に基づき知的学習支援環境システムの改善を行う。特に,研究協力校での実践を中学校技術家庭科技術分野のコンピュータによる計測・制御で行なうため,利用端末であるタブレットPCとマイコンとの間のインタフェースアプリケーションの開発を重点的に行なう。(3)開発したシステムの定量的な評価を行うために,予備実験から評価の基準を策定する。(4)協力校を中心にシステムの評価を実施し,そこで得られた各種データの分析とまとめを行い,システムの有効性,有用性について検証を行い,広く結果を学会発表およびWebサイトからの情報発信を行う。(5)現職派遣の中学校教員どに対してアウトリーチを積極的に行ない,成果の普及を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
2年目の研究費の使用計画は次の通りである。2年目から研究協力校での評価実験を行なうことから,協力校で実験を行なうための環境整備を行なう。実験で利用するタブレットPCは,1年目にタブレットPCの教育利用の評価を行なうことからすでに21台購入してある。協力校の1クラスの生徒数は35名から40名程度ある。協力校との事前打合で2人で1台利用することから,タブレットPCはほぼ足りているが故障等のことを考慮して予備機を4台ほど追加で購入を行なう。また,協力校の情報セキュリティポリシとの兼ね合いで2年目はネットワーク利用を行なわないことから協力校に設置するサーバの整備を行なう。さらに,研究協力校での実践を中学校技術家庭科技術分野のコンピュータによる計測・制御で行なうため,利用端末であるタブレットPCとマイコンとの間のインタフェースアプリケーションの開発を行なう。その他,研究成果の公表のため学会での論文投稿,研究発表,情報収集などを行なう。
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