本研究では、学習者による論証評価・論証形成(問題発見、仮説形成、仮説検証)のプロセスを頭皮脳波のダイナミクスに対応づけることを試み、協調・協同学習の授業設計、学習成果の評価のための指標としての脳波の活用の可能性を検討した。 平成23年度に開発した思考過程の外部モニターとしてのCSCLを併用し、暗算課題および論証評価・論証形成課題の遂行時に発生する脳波を5名の被験者から測定した。安静閉眼状態に比べて、暗算課題、論証評価・論証形成課題ともに、デルタ帯域(2Hz)とアルファ帯域(10Hz)の脳波が課題遂行時に顕著に出現した。得られた脳波信号のウェーブレット変換によって、振動数ごとに脳波信号から瞬時強度および瞬時位相を分離し、異なる振動数帯域間での位相固定を検出した。しかし、暗算課題と論証評価・論証形成課題での2Hz成分と10Hz成分の位相同期の出現時間を比較したが、大きな差は見いだせなかった。また、1名の被験者から収集した心電図のQT間隔についても2課題間での大きな差異は認められなかった。現時点では、暗算とは質の異なる論証評価・論証形成課題に特有な脳波位相同期および心電図のQT間隔を見出すことはできておらず、研究計画で予想した脳波位相同期を指標とする思考過程の評価の可能性を示すことはできていないが、本研究において、脳波の位相同期を検出する方法が確立できたので、今後は、論証評価・論証形成課題についての再検討を行い、被験者数を増やした上で、課題間での有意な差が検出できるかどうかを検討する予定である。
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