研究課題/領域番号 |
23501103
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研究機関 | 尚美学園大学 |
研究代表者 |
山本 樹 尚美学園大学, 公私立大学の部局等, その他 (30535266)
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研究分担者 |
國宗 永佳 信州大学, 工学部, 助教 (90377648)
須藤 智 尚美学園大学, 公私立大学の部局等, 講師 (00383349)
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キーワード | アルゴリズム的思考法 / 論理的文章 / プログラミング教育 |
研究概要 |
「アルゴリズム的思考法教育」では,初級のプログラミング学習者がプログラムを作成する際の過程について,(1)問題の理解と(2)プログラムへの転換に分類した.(1)では(1a)与えられた問題文で何を解くことを求められているかを理解し,(1b)作成するプログラムで得られる結果・出力を考える.また,(2)では(2a)プログラムを記述するために必要な概念について理解し,(2b)これらの概念をプログラムとして記述するための文法や表記方法を用いて,(2c)(1b)で考えた解法を(2a)の概念を用いて再構成する.これらの分類に基づき,各段階での困難さを減少するための課題の設定や支援方法について検討した.支援方法として,「問題の理解」の段階については,学習者の前提知識に合わせて,日常生活や高校までの既習事項をもとに問題文を作成している.また,「結果・解法の考案」の段階については,例示数は2つ以上にし,学習者に誤解を与えないような工夫をしている.「プログラムへの転換」の段階については,「枠組みの知識」の定着のために多くの時間を費やし,各要素のアルゴリズムを読む問題を中心に授業展開した.各回の授業で行っている小テストの結果から,着実に枠組みの知識が獲得できていると考えられる.この検討に基づき,本質的な部分について多くの時間をかけるための指導を実施したところ,一部の能力について向上したことが分かった. プログラミング教育の中で,文章力を養成する取り組みの1つとして.技術文書作成力を養成するために設計書を作成し,それを基に他者がプログラミングし,作成した設計書とプログラムを対象にディスカッションする授業を実施・評価した.授業結果を考察したところ,ディスカッションにおいて,本実践の目的とした,気づきが得られているとみなせるディスカッションが行われていた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「論理的文章教育」で行う予定であった文章構造のパターン要素について,当該年度で書籍数を増やし分析を行っている.しかし,書籍をデジタル化し,分析のためのフォーマット対応のために多くの時間を費やしたことと,分析方法を複数用意し,その比較を行ってるため遅れが生じている. 「アルゴリズム的思考法教育」で行う予定であった「論理的文章教育」の実践については,4月から7月の授業で,プログラムの制御構造ブロックについて,コメントを記述させる授業を行ったものの,学習者の記述した文章は抽象度が大きく違ったことから,分析するに至らず,学習方法の再検討が求められたため,研究成果報告するに至らなかった,
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今後の研究の推進方策 |
「アルゴリズム的思考法教育」については,まず,問題解決プロセスのなかで,「解法の再構成」の部分について,当該年度では,より多く経験するといった支援方法のみであったが,より効果的・効率的な指導を検討する.また,プログラミング言語の概念や文法についても,より効果的な記憶定着を促す方法について検討する.さらに,実施した授業の中で利用した問題のS-P表分析によって,問題文の適切性を確認するとともに, 学習者の解答から「枠組みの転換」の段階での学習者分析などによって,提案手法の妥当性を確認する. 「論理的文章」の分析においては,テキストマイニングツールを複数用いて,文章作成力に必要な1つである「論理力」について.10月を目処に研究成果報告を行う. 「アルゴリズム的思考法を用いて,学習者の思考を外化するための教育方法」として,当該年度に行った技術文書作成授業を継続して実践する.また,「アルゴリズムの考え方の記述ブロック」を用いて,プログラミングの授業内で「文章力」を養成する授業を実施する.ここでは,アルゴリズムの考え方の記述方法をテンプレート化し,「構造ブロックごとの考え方」の記述と,「セグメントごとの考え方および実行方法」の記述を区別した授業方法を行う予定である.これにより,アルゴリズムを学習者がどのように思考しているかを確認するとともに,プログラミング教育のなかで論理的文章力を養成できるかを検証し,3月を目処に,研究目的であるアルゴリズム的思考法を用いて学習者の思考を外化するための教育方法の調査結果として報告する.
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度に実施予定であった,アルゴリズ的思考法教育を行っている授業内で文章作成教育の実践を行い,実践の結果を詳細に分析し,論理的文章の文章構造とプログラムの構成要素との対応について再検討する予定であったが,実施教育期間が,(1)計画予定とは異なったこと,(2)実施予定時期が1年遅れたこと,(3)(2)によりアルゴリズム的思考法教育ツールの改良が遅れたこと,から実施計画に大幅な遅れが生じたため,次年度に使用額が生じた. 平成24年度は,アルゴリズム的思考法教育,論理的文章教育とともに,計画時より大幅な遅れが生じたこと,および,当該年度に学 会等での成果報告をできなかったことから,当初予定より未使用額が生じたが,次年度は,当該年度と合わせた成果報告を行うための 旅費が必要であることから,研究費の使用を計画している. 論理的文章教育の調査では,調査対象書籍の分析のため,書籍のデジタル化と,分析のための書式フォーマットを行う必要があることから,これらの作業のために人件費を計画している.
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