研究課題/領域番号 |
23501106
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
高瀬 治彦 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10283516)
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研究分担者 |
鶴岡 信治 三重大学, 地域イノベーション学研究科, 教授 (30126982)
川中 普晴 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30437115)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 教育支援 / 自然言語処理 / データマイニング / データ可視化 |
研究概要 |
本研究の目標は,「多人数の演習においてリアルタイムに,講師が学生指導をできるように支援すること」であった.その中で初年度である平成23年度には,「全学生の学習活動を保持することで,各学習者の理解状況を正確に同定する」についての検討をした.その結果として,学生の解答文に含まれる単語の統計情報から,その問題固有のキーワードを自動で抽出する手法を提案した.この手法では,解答群に含まれる単語の頻度情報と,一般の文書に含まれる単語の頻度情報をもとに球形基底関数 (RBF) ネットワークにより,各単語のその問題における重要度を推定する手法である.この方法は,学生の解答を形態素解析により単語(形態素)単位に分割した後,その頻度を測定することで,キーワードの推定ができる.意味解析等を伴わないため,文章が完結する前から分析が可能であり,日本語に限らない分析手法である.加えて,形態素解析は自然言語処理の中では比較的軽量な分析手法であるため,多数の学生の解答をリアルタイムで処理することが可能である.また,RBFネットワークを用いて推定を行うため,講師の要求によって,推定するキーワードが満たすべき頻度の条件を柔軟に変更できる.これらの成果は,平成24年度開催の国際・国内会議で発表予定である.これにより,講師が学生の解答を斜め読みする際に,注視すべき点をシステムが強調できるようになる.またその分析方法も,多数の学生の解答をリアルタイムで処理するのに適した方法を採用しているため,本研究の目的である「リアルタイムに学生の理解状況を把握する」ことに対して,その根幹をなす方法であるといえる.また,RBFネットワークにより得られた柔軟性により,さまざまな分野・講師が利用する際に容易に対応できるといえる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の検討内容は,「全学生の学習活動を保持することで,各学習者の理解状況を正確に同定する」ことであった.研究実績の概要の項に示したように,これまでの検討の結果,「学生の解答文に含まれる単語の統計情報から,その問題固有のキーワードを自動で抽出する手法」を提案した.これは目的と異なるように見えるが,以下に記すように「おおむね順調に研究が進展している」状態であると考える.全学生の学習活動としては,授業中に行われる確認テスト(小テスト)に対する解答の入力状況に着目している.確認テスト以外の時間帯での活動状況に着目することも考えられるが,学生の負担を考えると確認テストの時のみに限定する方が好ましいと考える.本研究では加えて,講師が確認テストを気軽に実施できることもめざしている.そのため,着目した活動に関しては不足はないと考える.各学習者の理解状況を正確に同定することに関しては,現状は解答群中で講師が着目すべき点を自動で抽出できるようになった.これは,理解状況を同定するところまでは至っていない.しかし,講師に解答の適切な場所を強調し提供することで,講師は解答の内容を把握する手間を大いに低減できる.全自動で提供された結果を意に沿うように調整する手間と,わかりやすく提供された解答を把握する手間とを比べると,特段の不足があるとはいえない.また提案した方法は,要求事項として挙げられていた解析の「リアルタイム性」に関しては,研究実績の概要の項に示したように実用的なレベルに達しており,十分に当初の目標を達成しているといえる.以上を総合すると,現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」といえる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目標は,「多人数の演習においてリアルタイムに,講師が学生指導をできるように支援すること」であった.これに対し,演習の解答を通じて講師が学生の理解状況を把握するための方法については,平成23年度に検討できた.そこで平成24年度は,この方法をシステムとして実装してゆくことで,講師・学生に負担のかからない演習環境について検討してゆく.従来,計算機により学生から解答・情報を取得しようとすると,特別な装置が必要であり一般の教室で気軽に使用できるものではなかった.そこで,近年の急速に普及しつつあるタブレット型端末に着目する.タブレット型端末は,B5版の書籍と同程度の大きさのため,一般のパーソナルコンピュータを置く場合と異なり,さほど邪魔にはならない.また,無線通信を前提としているため,情報の配布・収集にあたり無線親機を設置するだけでよい.このような利点に対して,これまでの学習支援システムは,一般のパーソナルコンピュータを前提としたシステムの構成を持つ.そのため,従来のシステムの利点を生かしつつ,また,提案法のリアルタイム性を損なわないように,キーボード・マウス主体のインターフェイスを改め,タップ主体のインターフェイスを検討する.続く平成25年度は,この時点までで構築されたシステムの(仮)運用を通じて得た知見を元に,講師への解答の分析結果の提示法について検討する.特に,個々の問題の解答を分析した結果だけでなく,学習履歴もふまえた分析結果を提示することで,各学生の理解状況を講師が正確に把握する助けとする.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,今後の研究の推進方策の項に記したとおり,学生・講師双方のインターフェイスをタブレット端末を使用したものに置き換える.そのため,多数(8台程度)のタブレット端末の購入を行う.また,スマートフォンのようなより小型の情報端末の可能性も検討するため,小型携帯端末も2台程度購入する.加えてこれらを管理するために,管理用のパーソナルコンピュータ(1式)および無線ネットワーク設備の購入も行う.これらを利用し,インターフェイスの検討・実験を行う予定である.また,平成23年度および平成24年度の研究成果発表のため,学会参加費・旅費・論文印刷費も計上している.現在,国際会議1件,国内会議4件,投稿論文1件を予定している.さらに,システム開発・データ分析のためのアルバイト雇用の費用も計上している.平成25年度は, 今後の研究の推進方策の項に記したとおり,システムの運用を通じた分析・改良を行う.そのために,講義風景分析用の計算機および撮影装置の購入を行う.また,平成24年度および平成25年度の研究成果発表のため,学会参加費・旅費・論文印刷費も計上している.現在,国際会議1件,国内会議4件,投稿論文1件を予定している.さらに,データ分析のためのアルバイト雇用の費用も計上している.
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