研究課題/領域番号 |
23501110
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
中野 俊幸 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 教授 (20284424)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | パソコンの活用 |
研究概要 |
本研究の目的の一つは,幾何的図の捉え方の相違(実体か,記号か)と幾何的論証能力との相関性を中学生に対する調査で明らかにすることである。幾何的図の捉え方を問う問題と証明問題を解かせることによって、この相関性を調べる。そして、図的表記を実体と見る思考から規約的記号とみる思考への発達と幾何的論証能力向上との関係性について考察することである。 図的表記を,実体と規約的記号のどちらと捉えているかを知るには,図的表記の類似的有契性と規約性のどちらをより信頼できると考えているかを調べればよい。23年度はこれを調べる質問紙を作成した。中学校の現場教師の協力を得て、中学生へのアンケート調査を依頼した。しかし、このアンケートの回収は、23年度中はまだ終わっていない。また、幾何的論証能力をみる問題は、証明問題に対する成績を利用できることになったが、データの回収は、23年度中はまだ終わっていない。 本研究の第2の目的は,幾何的論証能力の育成に,「図形を分析する前に,まず作らせることから始める」という構成を先行させる指導法が有効であり,特にパソコンの幾何的シミュレーション・ソフトの活用が有効であることを,中学校の授業実践を開発して検証することである。これについては中学校の現場教師の協力を準備を整え、試行的検討を行ってきた。 まず、実践現場に持ち込めるパソコンとプロジェクターを揃え,パソコンの幾何的シミュレーション・ソフトCbriIIの個人ライセンスを購入した。そして、その使い方を協力者の中学校教師に指導し、技術やノウハウを取得したもらった。また、中学校数学教材で、シミュレーション・ソフトを活用できる教材について検討し、試行的に幾何の授業でパソコンを活用する実践を行った。しかし、本格的な実践的研究には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れている理由は、パソコン機器と幾何のシュミレーションソフトを教室に持ち込むためには、その操作や活用の基本的方法について、現場教師に十分習得してもらう必要があったからである。パソコンを活用することの教育的意義の理解も含めて、このための時間がかなり必要であった。 また、本研究は、実践的研究を基本にしているので、教育現場の様々な制約にあわせざるを得なかったことも、研究がやや遅れている主要な原因の一つである。例えば、学習指導内容が代数や関数である時期に、本研究が対象としている幾何の授業を実践することは難しく、幾何的内容でのパソコン活用の実践的検討は、3学期(1月~3月)に行わざるを得なかった。また、論証能力の調査も証明が指導された後に行わざるを得ず、このため、調査・分析を23年度中に修了することができなかったのである。 ただし、今年度は、パソコン機器やソフトも一通り調え、協力者の現場教師の理解も十分得られ、また、研究会への参加で有益な情報を得たので、24年度に向けた研究の基礎的な準備は調えることはできた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の成果を基に,引き続き,図を実体と捉えているか記号と捉えているかのアンケート調査,および幾何的論証能力をみる調査を行い,その関連性を考察する。 また,平成23年度に開発し試行したパソコンの幾何的シミュレーション・ソフトの活用を前提とした幾何教材,授業構成およびその指導法をさらに本格的に実践して,その実践的課題を明らかにしていくと同時に,上記の調査を行って,幾何的論証能力の育成に有効かどうかを検証する。 なお、研究を進めるにあたり、国内外の研究の情報を集めるとともに、学会等で中間的な成果を発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究費は、依頼したアンケート調査と幾何の証明問題の成績のデータの回収が完了せず、その分析・考察が行えなかったことに因るものである。また、協力者の中学校教師のパソコン機器とシミュレーションソフトとの使い方の技能習得に時間を要したため、さらに実践に必要な資料や物品を揃えるに至らない状況があった。 24年度にはアンケートの回答と幾何の証明問題の成績のデータが回収されるので、これを統計処理し、分析・考察する。これによって、幾何的図の捉え方の相違(実体か,記号か)と幾何的論証能力との相関性を明らかにする。 次年度は、平成23年度に試行したパソコン活用の授業をさらに本格的に実践するので、さらに実践に必要な資料や物品を揃えるとともに、パソコンの幾何的シミュレーションのためのソフトを,研究協力者の現場教師の学校ライセンスを購入し整備する。 また、パソコンの活用を前提としながらも,同時に生徒が図形を作ったり描いたりする作業も同時に行わせたいので,そのための用紙(厚紙や色紙等)や工作文具(定規,コンパス,はさみ,のり,セロテープ等)を十分用意し,授業実践で生徒が自主的に活動できるようにする。また,さらに、授業を記録するための,記録媒体も十分用意する。 このため、次年度は、該当研究費と24年度の研究費を合わせた額を執行予定である。
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