研究課題/領域番号 |
23501117
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
稲葉 竹俊 東京工科大学, メディア学部, 教授 (10386766)
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研究分担者 |
安藤 公彦 東京工科大学, メディア学部, 助教 (00551863)
松永 信介 東京工科大学, メディア学部, 准教授 (60318871)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 協調学習 / 協調スクリプト / 学習者特性 / CSCL / AHS |
研究概要 |
近年、コンピューターが学習者や各グループの協調学習を支援する、コンピューター支援協調学習の研究分野において、グループ編成・グループ内のメンバーの役割・学習活動の流れ・手順などをシナリオ化した、協調スクリプトの研究が注目されている。協調スクリプトは、学習者自身にゆだねられた自発的活動のみでは、しばしば支障をきたす可能性のある協調学習のプロセスの強力な外的支援として、その有効性を報告している研究が多い。しかし、学習活動をスクリプトによって画一的にシナリオ化してしまうことで、自然な学習活動がしばしば阻害されてしまう傾向があるとの指摘がある。本研究では、その問題点を緩和するため、学習者の特性や学習状況に適応して協調スクリプトの調整を可変的に行うことのできる学習者特性適応型のCSCLシステムを設計し、その機能の一部を実装し、評価実験を行う。 平成23年度は、相互教授法にならい相互問題作成協調スクリプトの運用のためのシステムを構築した。開発システムでは以下のような機能を実装した。(1)学習者の属性からデータベースとして抽出された学習者モデルに基いたグループ編成機能。(2)学習者の問題の投稿・閲覧機能、学習者間の問題評価機能、インタラクションのためのリアルタイムチャット機能、オンラインテスト機能などの遠隔学習支援機能。(3)協調スクリプトにおける、「作成者」、「解答者」、「採点者」といった役割を協調学習プロセスの各フェーズでメンバーに配分するタスク配分機能。 評価実験として、本システムを論理学の初歩を扱う大学の講義で実施した。グループは3人で構成し、グループ数は116となった。実験結果として、システムの動作については、概ね意図した通り諸機能は稼働していることが確認できた。また、利用者アンケートでは、システムを使った問題相互評価やチャットなどのグループワークが高評価であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書において、平成23年度のために設定した研究目標は、(1) 先行研究の調査と分析、(2) スクリプトの設計、(3) 学習者特性適応型のシステムの実装であった。 目標の(1)については、平成23年8月まで、研究組織のメンバーおよび大学院生で定期的な報告会を行い、主要な研究の要旨を作成し、研究現状の掌握を行うことができた。 (2)については、(1)の調査に基づいて、デザイン原則としてSWISHモデル(Split Where Interaction Should Happen)と呼ばれるデザイン原則を採用し、具体的には相互教授法を参照しつつ、学習者間で与えられた課題の問題をそれぞれが作成、相互解答、相互評価をおこなうスクリプトを設計した。 (3)については、(2)で設計したスクリプトに従った学習の各フェーズで、メンバーが遠隔で行える諸機能を実装できた。また、学習者の適応については、まず、各学習者の特性をデータベースとしてモデル化し、蓄積・変更できる機能、およびそのモデルに基づいた適応的なグループ編成を自動的に行うことができる機能を実現した。 以上、一定程度、所定の目標を達成できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
23年度の研究成果を踏まえて以下の目標を設定する。 (1) 学習者および学習グループの行動の追跡ツールおよびそこで得られたデータのモデル化、(2) (1)で抽出されたモデルに基づく、適応的協調学習プロセス支援機能の設計と実装、(3) システムの評価実験、特に、適応機能の有効性の評価のための実験群と統制群との比較実験の実施。 これらの目的達成の方策として、(1)については23年度の実験で取得されたチャットログ、学習の中で提出された成果物などの詳細な分析を行い、協調学習プロセスに対して関与的な要因を明らかにし、その取得を容易にするツールを考案する。(2)については、ツール等から取得されたデータに基づくシステムの所作を設計、実装する。(3)については、23年度に実験を行った授業で24年度も実験を続けて行うだけでなく、他の大教室授業においても実験を行う。 これらの研究成果については、年度の後半に国内外の学会において発表を行うとともに、論文投稿を年度末に行うこととしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
23度の研究費において次年次使用額が生じた主な要因は、人件費が平成23年度は未使用であった点とあらたにサーバ等を購入せず、研究組織がすでに所有しているサーバでシステムを仮運用したことの2点である。 24年度については、適応機能の実装のためには研究組織以外のプログラム能力の高い人員の補助が必要と思われる。また、実験の実施においても補助人員が相当数必要であることが予想される。なお、24年度は、本研究専用のサーバを構築し、システムの移管を行う予定である。 以上から、次年度の研究費の支出では謝金部分に400,000円から500,000円程度、物品費に400,000円程度、旅費に200,000円程度を使用する予定である。
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