研究課題/領域番号 |
23501117
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
稲葉 竹俊 東京工科大学, 教養学環, 教授 (10386766)
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研究分担者 |
安藤 公彦 東京工科大学, メディア学部, 助教 (00551863)
松永 信介 東京工科大学, メディア学部, 准教授 (60318871)
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キーワード | 協調学習 / 協調スクリプト / CSCL / 学習者特性 / AHS |
研究概要 |
近年、コンピューターが学習者や各グループの協調学習を支援する、コンピューター支援協調学習の研究分野において、グループ編成・グループ内のメンバーの役割・学習活動の流れ・手順などをシナリオ化した、協調スクリプトの研究が注目されている。協調スクリプトは、学習者自身にゆだねられた自発的活動のみでは、しばしば支障をきたす可能性のある協調学習のプロセスの強力な外的支援として、その有効性を報告している研究が多い。しかし、学習活動をスクリプトによって画一的にシナリオ化してしまうことで、自然な学習活動がしばしば阻害されてしまう傾向があるとの指摘がある。本研究では、その問題点を緩和するため、学習者の特性や学習状況に適応して協調スクリプトの調整を可変的に行うことのできる学習者特性適応型のCSCLシステムを設計し、その機能の一部を実装し、評価実験を行う。 平成24年度は、23年度に構築したシステムから全面的な見直しを行い、新たな開発環境で新システムを構築し、大学内の授業でシステムの動作およびシステム上で実行される相互教授法に依拠した相互問題作成協調スクリプトの効果の検証を行った。 新システムでは、1.各発言者が発言するに際して、その属性を自ら定義付けを行うインターフェースを新たに実装し、2.グループの自動形成のアルゴリズムを見直すとともに、学習者特性から要素を選びパラメーターを自由に設定することで,成績や性が平均的または偏ったグループを編成する機能を付加した。 本システムを論理学の初歩を扱う大学の講義で実施し、システムの新機能を中心に検証を行った。グループは3人で構成し、グループ数は84となった。実験結果として、システムの動作については、概ね意図した通りグループの編成が行われたことを確認できた。また、発言や提出課題の分析から、協調プロセスが活性化するグループの特徴をいくつか抽出することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書において記された平成24年度の達成目標は、1.システムの実装、2.システムの試験的運用と評価であった。 1については、昨年度の研究成果に基づいて、あらたに高度化された機能を実装した協調学習支援システムを構築し、多様なスクリプトの実践可能となる汎用性を持たせることができた。また、習熟度や協調学習における各学習者の好みの役割(リーダー、観察者、質問者など)の諸特性を考慮したグループ編成の自動化についても実装に成功したといえる。 2については、平成25年の1月に大規模教室において、実験を実施した。システムの動作については、いくつかの問題もあったが、400人を超える大規模クラスにおいても、おおむね支障なく機能することを確認することができた。また、学習者の発言ログや提出物の取得についてもすべてをサーバに保存することができた。学習効果の検証については、まだ発言ログの解析への明確な方法は確立していないものの、提出物とグループの特性との比較から、協調プロセスが活性化する傾向のあるグループの構成にいくつかの特徴を見出すことができたので、来年度以降の研究において参考にしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は本研究の最終年度にあたる。25年度末までに行うべき目標として、次の3つを設定することとしたい。 1.インターフェースの改良:平成24年度の実験時には、発言の属性定義において学習者が困難や違和感を感じている様子が見られた。属性の選択肢の内容や入力の仕組みの見直しを行う。 2.リアルタイムの学習状況の把握手法の開発:学習者間での協調作業は、議論はチャットや資料の交換を通して行われるが、その作業がどのような状態にあるのかを把握することは難しい。システムサイドで、議論が活性化しているか、発言者に偏りがないか、議論が脱線をしていないか、提出すべき資料の作成が遅れていないか等について把握し、指示をリアルタイムで行えるような機能の実装を目指す。 3.上の2つの方針に従ってシステムの改善を行い、大学内の授業において実験を実施:実験時の視点としては、インターフェース上での発言属性選択の効果、システムの学習状況把握機能の精度の検証などがあり、最終的には、本システムで提供されるスクリプトおよび学習者特性対応機能が協調学習における相互作用の活性化に、どの程度効果的であったかを検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.システムの設計と構築に時間を要し、実験を行うにあたっては、次善の策として既存のサーバや機器を用いたため、平成24年度に予定されていたサーバ機や実験PC等の購入ができなかった。平成25年度は、これら機材の購入を平成24年度からの繰り越しの研究費を用いてできるだけ速やかに行う 2.システムのインターフェースおよび学習状況把握機能の実装のための構築費用 3.チャットログデータの解析のために事前に行うデータの整形のための人件費 4.成果の学会等での発表に必要な旅費(海外の学会での発表を含む) 5.CSCLとりわけ協調スクリプトについての研究動向の調査のための資料、書籍等の購入費
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