研究課題/領域番号 |
23501123
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研究機関 | 森ノ宮医療大学 |
研究代表者 |
鍋田 智之 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 教授 (00597817)
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研究分担者 |
小島 賢久 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 教授 (40454681)
江川 雅人 明治国際医療大学, 鍼灸学部, 教授 (90223635)
鍋田 理恵 関西医療大学, 保健医療学部, 講師 (60249464)
野口 栄太郎 筑波技術大学, 保健科学部, 教授 (80218297)
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キーワード | 客観的臨床能力試験 / OSCE / 鍼 / 灸 / 臨床実習前試験 |
研究概要 |
はり師・きゅう師養成教育における臨床実習前の多施設間共用評価を実施する上での問題点を検討してきた。平成23年度は試験映像を作成して全国の養成校に配布し、200名を超える教員から評価を得た。その結果、態度評価および鍼実技における衛生面において、専門学校が大学および視覚支援学校より有意に低い評価をつけ、養成施設間で実技評価が異なる実態が明らかとなった。平成24年度は、同一の試験問題を同一の評価基準を用いて多施設間で実施した場合に生じる問題点を検証した。平成25年3月に森ノ宮医療大学、明治国際医療大学、関西医療大医学、筑波技術大学の4校(36名)を対象として、客観的臨床能力試験(OSCE)を実施した。公募を行い、研究の目的を十分に説明して同意の得られた2~4年生の学生に、予め出題内容を配布して事前学習を指示した。試験は医療面接、整形外科的検査法、鍼実技、灸実技の4ステーションで行った。各ステーションは実施校の内部評価者と他校の外部評価者の各1名で構成された。評価者には予め評価用紙と評価基準が配布され、各校の研究分担者が説明を行った。医療面接および整形外科的検査法では、十分に訓練を行った標準模擬患者(SP)を設定した。SPは森ノ宮医療大学大学院生2名が担当した。試験の結果は分析中であるが、医療面接の技術、整形外科的検査法でのカルテ記載、鍼実技の衛生面で養成校間の差が認められている。評価者間では、特定の評価者が低い評価をつける傾向が認められた。これらの事実から、養成校間および教員間での教育内容や到達度目標に差があることが考えられた。はり師・きゅう師養成教育においては、多くの問題が内在していることが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
はり師・きゅう師の養成教育では、伝統的な臨床実技が流派などによって養成校で異なるため、卒業時点における多施設間での共用試験は難しいと推測される。その一方で、臨床実習前の段階では患者とのコミュニケーション能力や基礎的な施術技術および検査法については養成校での差異は少ないことが考えられる。よって、本研究は臨床実習前の多施設間教養試験の将来的な実施を想定して、問題点を抽出する目的で実施している。これまでの段階で、多くの項目において大学間のみならず、専門学校や視覚支援学校とも共通する評価項目において、問題なく共通認識が得られる可能性が得られている。その一方で、鍼実技における衛生面への認識が異なるなど、問題点も抽出されている。予測される問題点を解消する目的で作成した試験問題および評価基準を用いた4大学での実技試験では、内外評価者間での差は少なかったが、特定の評価者で異なる評価が得られたり、養成校によっては学生に指導されていない可能性が考えられる項目が認められてもいる。平成24年度の時点では、考えられる問題点の抽出は達成できたと考えている。平成25年度は、これまでの抽出された問題点を、はり師・きゅう師を養成する全大学の担当者や専門学校を含む専門家と議論し、解決を試みることで多施設間共用試験の実現可能性について結論を得たいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、より多くの養成校で共用可能な臨床実習前の客観的臨床能力試験を構成することである。これまでに全養成校を対象として教員の評価基準に差異が生じる項目を調査した。また、同一問題を4大学で実施した結果から教育内容および到達度に違いがあることが考えられた。今後はこれらの問題点をどのようにして改善していくかについて、より多くの養成校の担当者と議論する必要がある。 平成25年度は、はり師・きゅう師を養成する11大学の担当者を集めてワークショップを開催する。また、専門学校においてOSCEを実施してきた担当者もアドバイザーとして参加を求める。ワークショップでは参加者全員を評価者として4種類の実技試験を実施する。その結果から評価に差が生じている理由と解決方法について議論する。研究代表者としては、臨床実習前の到達目標を統一し、合否の評価基準を示すことが出来ればと考えている。 これらの結果、はり師・きゅう師養成教育における臨床実習前のコア・カリキュラムの議論へ進むことを想定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
ワークショップを森ノ宮医療大学および大学から徒歩圏にある研修宿泊施設にて開催する。11大学および専門学校から15~20名の参加者を募る。参加者の交通費および宿泊費を研究費より負担する。森ノ宮医療大学の学生5名を模擬OSCEの受験者、運営者として招集する。標準模擬患者として、同大学院生2名を招集する。学生には謝金(1日5,000円×2日)を支払う。研修宿泊施設にて2日目のディスカッションを行う。会議室の経費を支出する。参加者の経費として600,000円、謝金として70,000円、会議室の経費として100,000円、予備費として30,000円を予定し、ワークショップ全体で800,000円の研究費を使用する。なお、研究分担者の経費は研究分担者の分担金より支出する(約100,000円)。ワークショップの実施は宿泊施設および旅行会社を介して参加者の経費を調整して適切に処理する。ワークショップ終了後は、模擬OSCEの評価結果と平成24年度の結果を学術論文として投稿する(50,000円)。文献検索および投稿の経費を支出する。平成25年6月、12月に研究分担者との会議を開催し、ワークショップの運営計画および本研究の結論をまとめる。会議費および交通費として200,000円を支出する。残る経費を印刷およびデータ解析、ファイル等に使用する。
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