平成25年度は、これまでの研究結果を集約し、AR教材を利用した板書表現の拡張の可能性について総括し、合わせて教育利用の準備と留意点の整理を行った。平成25年度は学部長を急遽務めることになったため、十分な時間がとれず、最後に予定していた授業利用のための指導用テキストの制作までには至っていない。しかし、AR技術を教育に利用するために必要な活用イメージの提示と、普及の基礎となる環境整備、AR教材の特徴を示す具体例の抽出についてはある程度筋道を立てられたと考えている。 1つ目は、マーカーレス(黒い枠の入ったマーカーを使わない技術)による板書表現の拡張例を製作し、その留意点について検討を行った。黒い枠の入ったマーカーは、認識率は高いが板書表現上の違和感が残る。これに対してマーカーレスは、単純な記号での認識率は下がるものの、板書時の補助資料に写真として提示するなどの工夫により板書表現上の違和感をおさえることができる。 2つ目は、AR教材の製作環境の整備と留意点について検討を行った。AR教材が普及するためには、学習者による利用場面に加えて、多様な教材の製作が必要となる。特に、ARを実現するソフトウェア(ライブラリ)に合わせた3DCGの制作と特殊効果(半透明、陰影の強調)やアニメーションの指定方法については、マニュアルの制作を試みた。 3つ目は、AR技術が活きる単元や教材の策定と一部制作を行った。従来型のシミュレーション教材や提示用のCG教材との違いを明確にするため、AR技術でなければ実現できない提示場面について考察を行った。
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