研究課題/領域番号 |
23501127
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研究機関 | 富山高等専門学校 |
研究代表者 |
星野 朱美 富山高等専門学校, 一般教養科, 准教授 (90300566)
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キーワード | 有気音のそり舌音 / 有気音の舌歯音 / 35CHのFBの作製 / パワーの自動計算 / VOTの自動測定 / 判定基準の作成 / 発話の自動判別 |
研究概要 |
中国語の発音には日本語に無いものが多く、その中でも日本人の殆どは,有気音の「そり舌音」と有気音の「舌歯音」の区別ができない。日本語の中にそり舌音がないので,中国語の「そり舌音」の発音ができない。自習しようにも自分の発話に対して正確な評価手段もない。そのため,本研究ではマルチメディア技術を用いた中国語発音教育のコンピュータ援助指導システム(CAI)の開発を目指している。 本研究は研究計画書に記載した通りに実施している。すなわち平成24年度に中国語の有気音の「そり舌音」と「舌歯音」の自動判別システムを開発した。まず,中心周波数50Hz~6850Hz,帯域幅200Hzの35チャンネル(CH)のフィルターバンク(FB)をパソコン中に構成し、入力された音声信号を11.025kHzで標本化し、CH毎に音声パワーの時間変化を求めるにより,VOTの破裂点(開始点)t1を検出した。母音の声帯振動が始まる時,フォルマントが現れ,この時点をVOTの終了時点t2とするVOTの自動測定のプログラムを作成した。次に「そり舌音」と「舌歯音」の特徴抽出のため,35チャンネル(CH)のフィルターバンク(FB)により、チャンネル毎にパワーの時間変化を求め,VOT中および有声期間中の周波数スペクトルの自動測定システムを開発した。更に前年度「そり舌音」と「舌歯音」の発話の解析により確立した発話の正確さの評価基準を用い,自動判別のための判定基準のプログラムを作成し,「そり舌音」と「舌歯音」の発話の自動判別の実験を行った。その結果,「そり舌音」と「舌歯音」ともに94%以上高い判別率が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載した通りに実施している。「そり舌音」と「舌歯音」の発話の解析により様々な特徴やパターンを抽出して,認識率を上げるため,中心周波数50Hz~6850Hz,帯域幅200Hzの35チャンネル(CH)のフィルターバンク(FB)を形成し,発話のVOT中と音声期間中の動的周波数スペクトルを求める新しいモデルを開発した。また,模範データから抽出した様々な特徴やパターンを用い,VOTの自動測定と「そり舌音」と「舌歯音」の音節を判別できるプログラムを開発した。更に,その発話の判別システムを用いて実験を行い,「そり舌音」と「舌歯音」の発話に対して高い判別率が得られた。 これらの結果は,それぞれ2012年4月23~27日にフランスのナントで開催された国際音響学会と2013年3月13~15日に東京工科大学で開催された2013年春季日本音響学会研究発表会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は中国語の有気音と無気音の単母音の唇音などの発話を解析し,できるだけ多くのデータから様々な特徴やパターンを抽出し,それらのデータを平成24年度に開発した音節判別システムに加えて,それぞれの音節が認識できるプログラムを作製する。また,日本人学生と中国人の発話を対象にして,本システムを用いて音節の判別の実験を行う予定である。 さらに前年度までに開発したシステムを用いて学生にパソコン画面上で,自身の発音が正確かどうか,実際に発音の状況のチェックを試みる。 なお,それらの結果は国内外で,研究成果として発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は上記(今後の推進方策)のとおり研究を実施する予定である。最終年度に国内外でデータ収集及び研究発表の回数が増える予定であったため,今年度計画を見直し未使用額が生じた。平成24年度未使用額と平成25年度使用額を合算し本年度に国内外でのデータ収集及び研究発表する予定である。
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