研究課題/領域番号 |
23501131
|
研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
西尾 由里 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (20455059)
|
研究分担者 |
都築 雅子 中京大学, 国際教養学部, 教授 (00227448)
猪井 新一 茨城大学, 教育学部, 教授 (80254887)
米倉 達広 茨城大学, 工学部, 教授 (70240372)
|
キーワード | 小学生英語 / 小学校教員 / 英語発音 / 習得困難度 / 中心特性 / マルチメディア教材 |
研究概要 |
本研究の目的は、習得困難度(発音が困難である音声特徴)と中心特性(コミュニケーションの阻害要因となる音声特徴)の2つの視点を取り入れた小学校教員に対する英語発音向上マルチメディア教材の開発とその効果の検証である。1. 教授対象である小学5・6年生と小学校教員の英語発音から習得困難度と中心特性となる音声特徴を明らかにし、それらの最重要学習項目の優先順位を付ける。2. 優先順位の高い音声特徴項目から学習する教員用英語発音向上マルチメディア教材を開発する。3.その教材の効果を検証する。4. その教材の普及のため、小学校教員向けのワークショップを実施する。 英語学習者にとって、習得が困難である音声特徴があることが認められる。しかし、小学生の発音に関しては、西尾(2000)の音素の研究のみで、超分節音まで扱った研究はない。発音を教える教員は、NSsと比べ、教授対象者と自分自身の発音にどのような違いがあり、習得が困難かを知っておく必要がある。 さらに、習得が困難であるすべての音声特徴がコミュニケーションの阻害につながるかといった疑問が生まれてくる。それらのうち最低限必要なものを中心特性と呼び、それを確立しようとする試みがされている (Jenkins, 2000; 2002)。この中心特性を日本人大学生対象に明らかにしようとする研究はいくつか見られるが、まだ十分に研究されているとはいえない。 以上のように、教授対象者(小学5・6年生)と教員自身の英語発音の習得困難度と中心特性から決定された最重要項目から優先的に学習する英語発音教材を開発することは、重要な音声特徴を効率的に学習する機会を与え、小学校教員への支援となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2011年度は、小学校教員が発音に自信がなく、研修棟も不十分である実態をすでに猪井(当分担者)やベネッセで実施されていたアンケートを分析することにより明らかにした。2012年度は、今後小学校教員になる学生の音声を収録した。その音声を研究者が聞き取り、さらに音響分析をかけどの音声が習得困難度と中心特性となる音声特徴かを明らかにし、それらを最重要学習項目として優先順位をつけた。正確に発音されていない音声特徴は次のとおりである。 1. /l/・/r/の区別、2. 摩擦音の変換、 3. 摩擦音の弱化、 4.閉鎖音の無帯気化、5. 母音の長さ、 6. 単語、複合語、フレーズ内でのストレスの不備、7. 単調なリズム、の7点である。そのうち、特に中心特性にかかわるものは、1・3・4・5・6で、これらの音声の不正確さは、内容の理解に大きく影響されることが明らかにされた。 以上のように明らかになった優先順位の高い音声特徴項目から学習できる英語発音向上マルチメディア教材を開発する。その教材の効果を検証する。さらには、その教材の普及のため、ワークショップを実施する。
|
今後の研究の推進方策 |
マルチメディア教材開発・検証・普及では、どのような英語発音教材が適切かということが重要になってくる。文字、音声、発音者の顔さらには視覚的なアクセント表示を加えたマルチメディア教材の効果が立証されているので、習得困難度と中心特性から抽出された優先順位の高い音声特性を入れ、コミュニケーション活動で使われる語彙・英文を『Hi, friends』(文部科学省制作)と中学校との連携を視野に入れ中学検定教科書から抜粋する。それらの語彙・英文を使ったマルチメディア教材を制作する。その教材の効果のパイロット実験を行ったのち、修正改良を行う。 次に、完成教材の学習前後で小学校教員の発音が向上するかどうかの効果を検証する本実験を行う。その後、教材を普及させるために、ワークショップを行う。 なお、研究終了後、Web上で公開できるよう、マルチメディア制作にはAdobe社Flash等を使い汎用性を高める。 その結果、以下のような貢献ができる。1.小学5・6年生及び小学校教員の発音における習得困難度と中心特性の順位を確定できる。2. 優先順位順のマルチメディア教材を制作することにより、極めて短期間で費用がかからず、発音の大きな改善につながる。3. 多忙で時間確保が困難な小学校教員にとって、自宅学習が可能であるため、自律的学習が可能であり、恩恵が大きい。4. 学習者及び教員の科学的データを根拠とした知識を得て、その訓練を受けることにより、教員の質が向上する。5.教員の自信ある話し方が、児童にとっての話し手のモデルとなり、積極的なコミュニケーション能力を養成し、世界に英語で発信できる人材を育成することになる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
マルチメディア教材開発において、音声材料や挿絵や動画などの素材の作成や、実際のマルチメディア作成には、専門家に依頼するため、それらの謝金等で600,000円計上する。さらに、マルチメディア教材の効果を測定するためのワークショップの開催に当たり、その広告・宣伝、および会場・人員手配のため、300,000円計上する。本研究の発表のため、World Englihes などの海外での学会発表のため600,000円(3名)を充てる。
|