研究課題/領域番号 |
23501137
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
松田 稔樹 東京工業大学, 社会理工学研究科, 准教授 (60173845)
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キーワード | 数学的な見方・考え方 / PISA型学力 / 情報的な見方・考え方 / 指導法開発 / 教材開発 / 教授活動ゲーム / 学習者モデル / 問題解決 |
研究概要 |
本研究では、PISA型学力や学習成果の活用力を育成するために、教科目標に含まれながら明確な指導がされてこなかった「見方・考え方」の指導法を確立し、それを教師教育に結び付ける方法論の開発を行う。具体的には、以下の①~⑤を行う。①仮説となる学習者モデルを作成する。②モデルに基づく指導法を定式化し、eラーニング教材化して学習実験を行う。③結果に基づきモデルや指導法を改良する。④以上の成果を教師教育に結びつけるために模擬授業ゲームを開発する。⑤模擬授業ゲームの効果を検証し、改善する。なお、対象教科は数学と情報である。昨年度、①~③を数学と情報の両方に対して行ったため、今年度は、それらを改良、詳細化しながら、①~③を繰り返すと同時に、④にも取り組んだ。具体的には、①の学習者モデルについては、問題解決スクリプトが階層的に構成されており、それらがメタルールによって活用されるとした。見方・考え方は、それらの問題解決スクリプトから起動されるが、有用性や活用の自信度で活用されるかどうかが決まるというメカニズムを考えた。また、見方・考え方は学習方略としての機能も果たし、領域専門知識の獲得や組織化に影響を与えることをモデル化した。そして、領域専門知識とそれらが活用される文脈との関連づけの様態によって、テスト学力と日常生活の中に生きる学力との違いが説明されるとした。なお、学習者モデルは、各教科別ではなく、複数教科で共通化できるものとして統合化を図っている。また、それに合わせて、数学の課題学習や科学技術コミュニケーションのための教材開発にも着手した。これらのモデルを明確にしつつ、現在、模擬授業ゲーム開発の基盤となる教授活動ゲームに、学習者モデル記述機能を拡張すべく、作業を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
既に、数学、情報の両方について学習者モデル、指導法、教材の検討と開発が進み、さらに、それらを理科にも広げるとともに、それら全体を統合するモデルへと拡張している。模擬授業ゲームについては、学習者モデルの拡張・詳細化に伴い、学習者モデルの記述機能を新たに開発する必要が生じたため、若干作業が遅れているが、むしろ、より良いシステムが開発される見通しが得られており、その意味でも、当初計画以上に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
全体的に当初計画より大幅に進んでいるが、2012年度は学習者モデルの詳細化に重点を置き、数学的な見方・考え方を活用して問題解決をさせるための対話インタフェースの完成度がまだ十分とは言えない。2013年度は、この対話インタフェースの開発を進めながら教材開発を進める。同様に、模擬授業ゲームに関しても、学習者モデルを実装した後、学習者の状況をユーザにフィードバックするための対話インタフェースの開発が鍵になる。2013年度は、学習者モデルの記述機能と、対話インタフェースの開発に重点を置き、完成したゲームの教育効果を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用分は10万円程であるが、順調に成果が上がっており、当初計画通り、国内で3回、海外で2回発表するために、この程度の予算を残しておく必要があると判断した。実際、2013年度に発表予定の国内及び国際会議の出張旅費やそれに関連する参加費、英文校正費用などで、直接経費の70%を使用し、システム開発環境のライセンス更新料で、直接経費の20%程度を使用する。残りの10%は、消耗品や謝金に使用する予定である。
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